2017年12月20日(水) 21:00
▲ netkeiba Books+ から「キタサンブラック 登り詰めた最強の座」の1章、2章をお届けいたします。(撮影:下野雄規)
2戦2勝のキタサンブラックは、2015年3月22日、皐月賞トライアルのスプリングステークスに出走した。5番人気と評価は低かったが、2番手から押し切る強い競馬で勝利をおさめる。2着はのちにドバイターフを勝つリアルスティール、3着は2歳王者のダノンプラチナで、どちらもディープインパクト産駒だった。またもブラックタイドの産駒が、最強の弟の仔を打ち負かしたのだ。
スプリングSでは弟の仔となる人気勢を破り、これで3戦3勝(撮影:下野雄規)
つづく皐月賞は4番人気で3着、ダービーは6番人気で14着に大敗した。
秋初戦のセントライト記念も6番人気という低い評価だったが完勝。
セントライト記念では6番人気で快勝(撮影:下野雄規)
そして、次走の菊花賞を5番人気で制し、オーナーの北島三郎(名義は大野商事)に馬主生活53年目にして初めてとなるGIタイトルをプレゼントした。
レース後、スタンド前で「勝利オーナーインタビュー」が行われた。そして北島が、即興で「まつり」のキタサンブラック版を初めて歌った
「まーつりだ、まつりだ、まつりだ、キタサンまつーり……これが競馬のまつりだよ♪」
京都競馬場に集まった5万人のファンがその歌声に酔いしれた。
北島にとって、キタサンブラックは、1963年に馬を持つようになってから、実に170頭目の所有馬だった。
つづく有馬記念は、主戦の北村宏司が左膝関節炎で騎乗できなくなったため、横山典弘が代打として騎乗し3着(4番人気)。
有馬記念では横山典弘騎手が騎乗した(左、撮影:下野雄規)
そして4歳になった2016年。北村の復帰が遅れていたこともあり、陣営は新たな主戦騎手として、武豊に白羽の矢を立てた。
武とのコンビ初戦となった大阪杯は、5番人気で2着。
コンビ2戦目の天皇賞・春では、武が芸術的なイーブンペースを刻んで逃げた。そして、ゴール前でカレンミロティックに一度はかわされながらも差し返す、驚異的な二の脚でハナ差の勝利をもぎとった。
武豊騎手に導かれ天皇賞・春で2つ目のGIタイトル
武は、交流GIや海外GIを逃げ切ったことはあったが、前人未到の70勝目となったJRA・GIを逃げ切ったのは、これが初めてだった。
次走、2番人気で臨んだ宝塚記念でも逃げ切りを狙ったが、マリアライトとドゥラメンテにかわされ、3着に終わった。
そして秋初戦の京都大賞典を勝つのだが、キタサンブラックが1番人気に支持されたのは、デビュー12戦目のこのレースが初めてのことだった。京都大賞典の前まで11戦6勝2着1回3着3回着外1回という、きわめて高いレベルで安定した強さを見せていた。また、勝つとオーナーが「まつり」を歌う特別な馬だった。なのに、どういうわけか1番人気にならなかった。地味な血統背景ゆえか。あるいは、「サブちゃんの馬にユタカが乗ってGIを勝つなんて、できすぎだ」と気持ちにブレーキをかけるファンが多かったからか。よくいる「人気先行型」とは対極的な「実力先行型」だった。
(続きは 『netkeiba Books+』 で)
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