2005年04月26日(火) 11:49 0
24日(日曜日)に香港のシャティン競馬場で行われた、今年のワールドシリーズ・レーシングチャンピオンシップの開幕戦香港G1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)は、2番人気に推された今年の香港ダービー馬ヴェンジャンスオブレイン(セン5、父ザビール)が優勝。上位4頭のうち3頭を香港調教馬が占めるという、地元ファンにとってうれしい結果となった。
ヴェンジャンスオブレインは、2歳時オーストラリアで3戦1勝の成績を残した後、3歳シーズンの終盤から香港でのキャンペーンを開始。今季2戦目のシャティンのハンデ戦で移籍後初勝利を挙げた後、1月にシャティンで行われた香港G3センテナリーヴァーズ(2000m)も連勝して重賞初制覇。更に前走、3月13日にシャティンで行われた香港G1香港ダービー(2000m)も制して、香港におけるこの世代のトップの座に就いた。
直前3連勝中だったヴェンジャンスオブレインだが、ことに前走の勝ち方は圧巻。香港ダービー史上、ハウスマスターと並ぶ最も高いレースレートを獲得し、ここは「近年最強のダービー馬」との称号を背負っての国際G1参戦だった。
実は馬主のチョウ・ナム氏が、香港ダービーの3日後に急死。ダービー制覇を祝って中国本土にお祝いの旅に出て、そこで心臓発作を起こしての最期という、人生の終わり方としては良いのか悪いのか、判断の付きかねる死出の旅路を迎えていた。そういう意味で、ヴェンジャンスオブレインの陣営にとっては弔い合戦が成就したクイーンエリザベス2世Cとなった。
2着は南アフリカの名伯楽マイク・ドゥコックが送り込んだ5歳牡馬グレイズイン(父ザビール)。昨年7月にG1ダーバンジュライを制し、この春は南ア最強馬としてドバイのキャンペーンに臨んだが、プレップレースのG3ドバイシティオヴゴールドを制した後に挑んだ大目標のG1シーマクラシックは4着。ここは捲土重来を期しての参戦だった。
香港ダービー2着馬ラシアンパールが3着に入り、昨年暮れのG1香港ヴァーズでは5着だったスーパーキッズが4着に入った。
地元勢の健闘は、もちろん香港調教馬の水準向上が最大の要因だと思うが、一方で、有力と見られた遠征馬たちの凡走に助けられた一面も否定できないように思う。1番人気を裏切り11着に敗れたオーストラリア調教馬のグランドアーミーは、シーズン末で見るからにピークを過ぎた感じだったし、昨年のG1香港ヴァーズ勝ち馬フェニックスリーチも、ここは距離が短すぎた上にドバイからの転戦で馬に若干の疲れが見られたように思う。前走ドG1ドバイデューティーフリー快勝のオーストラリア調教馬エルヴストロムも、ここでは道中折り合いを欠くレース振りで、心身ともにピークを過ぎていたことを感じさせる競馬っ振りだった。
勝ったヴェンジャンスオブレインは、ここが今季4戦目と、馬がまだフレッシュ。次走は5月に行われる香港G1チャンピオン&チャターCとのことだが、その後はぜひ6月に阪神で行われる宝塚記念に駒を進めてきてほしい1頭である。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。