2018年01月16日(火) 18:01 130
5年半の競馬の職人を振り返りました
netkeibaユーザーの皆さま、こんにちは。赤見千尋です。いつも競馬の職人をご覧いただきまして、ありがとうございます。私事で大変恐縮なのですが、この度第2子を授かりまして、もうすぐ40歳になる高齢出産のため、大事を取って早めにお仕事をセーブすることになりました。なかなか取材にも行けなくなるため、わたしの担当分は今週で最終回となります。
2012年7月からスタートしたこのコラム。タイトルが「競馬の職人」ということで、「職人と言えば“逃げ職人”中舘騎手でしょ!」と一番にインタビューさせていただいたのが中舘英二現調教師。
“逃げ職人”中舘騎手に最初のインタビュー
逃げ馬はスローになった方が有利、という基本の考えを覆す逃げ職人の考えには本当にびっくりしましたし、目から鱗のお話がたくさん聞けて、とても勉強になりました。同じ「逃げ」という戦法にもいろいろな種類があることを語っていただき、レースを見る幅も広がりました。
それまでの取材では、馬を中心に質問することが多かったのですが、このコラムを始めたことで人にスポットを当て、特にジョッキーたちそれぞれの騎乗論を聞くことができて面白かったです。
印象深かったのは、田辺裕信騎手の騎乗論。まず最初に登場していただいたのはブレイク直前の2013年でした。
田辺裕信騎手の騎乗論が印象深かったです
当時は第3場から主戦場を中央場所に移したところで、人気薄の馬でのイン突きで結果を出すイメージがありました。
道中で何を考えているか、馬と人のどこを見ているのか、わかりやすく詳しく語ってくれた田辺騎手。普段はお茶目なタイプですが、騎乗論を語りだすととても熱く、新たな一面を見せてくれました。
「これを機に、定期的に聞きに行こう」と決心し、以後2度に渡って騎乗論を語っていただいています。
以後2度に渡って騎乗論を語っていただきました
特に3度目の登場となった、逃げの極意をお聞きした回は反響が大きかったです。中舘調教師と同じく、「逃げていてもスローにすることは特に考えていない」と仰っていましたし、わたしの中で一番印象的だったのが、「本当のゴール板より、自分の心の中のゴール板を100m手前に設定している」というお話でした。大舞台で逃げたり早め先頭で結果を出す訳が、少しわかったような気持ちになりました。
それに、田辺騎手のお話がなぜ面白いのかというと、自分もレースに乗っているような感覚にさせてくれるんです。わかりやすい言葉で、率直な気持ちを話してくれる田辺騎手。騎乗技術の高さはもちろんですが、その人柄もとても魅力的です。
他にもこのコラムで注目度が高かったのが、穴ジョッキーたちに登場していただいた回です。
注目度が高かった穴ジョッキーたち 写真は武士沢騎手
こうして振り返ると、特に武士沢騎手の回が多いですね。定期的に大穴を開ける印象が強く、その秘密を探るために何度もしつこく質問しました(笑)。そのたびに丁寧に答えていただきましたが、未だ謎は解明されず…。これからも大穴ゲットに向けて、追いかけていきます!
それから、地方競馬の関係者の方々にもたくさん登場していただきました。このコラムでは、わたしは美浦担当という役目だったはずですが、いつの間にか美浦&地方担当という内容になっていました。中身がブレても受け入れてくれたnetkeibaさんには心から感謝していますし、たくさんのユーザーの皆さんが興味を持って読んでくれたことも嬉しかったです。
その中で強く印象に残っているのが、人と馬、人と人のドラマです。
強く印象に残っているのが、人と馬、人と人のドラマ 写真は左から菅原勲調教師、メイセイオペラ、牛山基康さん(ケイシュウニュース)、松尾康司さん(テシオ)
これらのエピソードは地方競馬ならではの出来事で、今思い出しても心がほっこりしてきます。
そして、わたしの原点である高崎競馬の関係者にも登場していただきました。
高崎競馬の騎手だった茂呂菊次郎さんにインタビューをしました
高崎競馬が終わって今年で14年目になりますが、故郷として大切な場所であることに変わりありません。一緒に戦ってきた先輩たち、仲間たちが各地で活躍している姿を誇りに思うし、別の道で頑張っている方々も、今でも繋がっていると感じています。何年経っても高崎出身であることは変わらないので、仲間たちに胸を張って会いに行ける自分でいられるよう頑張ります!
ということでこの5年半、わたし自身の好きなタイミングで好きな方々にインタビューして来ました。GIシーズンであるにも関わらず、全然違う内容のコラムをアップしたり…。戦略的にはどうなんだ?という感じですが、本当にわたしの想いが詰まったコラムになりました。
終わってしまうのは残念ですが、読んでくれたたくさんのユーザーの皆さま、お話を聞かせてくれた関係者の皆さま、そして週替わりで一緒に頑張ってくれた常石勝義さんに、心から感謝しています。5年半、ありがとうございました!また別の形でお目にかかれる日を楽しみにしています。
常石勝義
常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30~)に出演中。