2005年05月03日(火) 18:50
先週お伝えしたJRAブリーズアップセールは、予想をはるかに上回る好成績に終わり、その後中山競馬場にてセールを見学した何人もの友人知人からその模様が伝わってきた。彼らのセールから受けた印象を総合すれば、たぶん次のようなコメントになるだろう。「JRAという組織が持つ信頼性に裏打ちされた透明度の高いセール」だったということである。どういうことか。
例えば上場馬のレントゲン写真を公開したり、あるいは昨年以来今春までの各馬の調教メニューなどが個別に記された資料が配布されたり、といった購買者の側に立った情報公開がなされていたこともある。また日高のトレーニングセール(に限らないのだが)で散見する“デキレース”などはあろうはずもなくいわば100%“ガチンコ”セールだったことも購買者の信頼を集めた一因である。まさか天下のJRAに「庭先取引」を持ちかけるような猛者はいないだろうから。
逆に言えば、日高のトレーニングセールが抱える様々な問題や欠点が改めて浮き彫りとなってくる。信頼性をいかに確立して行くか、はどの市場であれ今後の大きな課題である。
さて、その日高で開催されるトレーニングセールの上場馬がすでに発表されている。5月23日に予定されている「HBAトレーニングセール」(HBA日高軽種馬農協主催)は名簿上で139頭がエントリー。アグネスタキオン牡、サクラバクシンオー牡、スペシャルウィーク牡、フォーティナイナー牡などが目に付いたところか。販売申し込み者の分布は日高一円に及び、名門牧場も名前を連ねる。先週天皇賞を勝ったスズカマンボの生産牧場であるグランド牧場が10頭の上場で、ここが最も多い。続いて日高大洋牧場(スペシャルウィークの生産牧場)の6頭というのもある。
翌24日は「ひだかトレーニングセール」(ひだか東農協主催)には、こちらも名簿上で139頭が上場予定だ。こちらにはHBAのセールにはいないダンスインザダークやブライアンズタイム、クロフネ、タイキシャトル産駒などもいて、種牡馬のレベルはやや高いかも知れない。地元のBTCを使用した調教馬が多いせいか、生産者も飼養者もこちらはかなり日高東部(浦河以東)に偏っている。ともに浦河地区では大手の高昭牧場が9頭、宮内牧場が5頭それぞれ生産馬を上場している。
日高地区ではないが、民間の「プレミアセール」が5月30日、3年ぶりに札幌競馬場で開催される。こちらはかつてこの会社の主要メンバーだった牧場主が逮捕されたり、また専修学校の理事長職を辞任したりとかなりダーティーなイメージが広がっていたのだが、昨年組織を一新してトレーニングセールを再開する運びとなった。今のところ上場予定馬は約60頭。一連のトレーニングセールの最後に組まれた日程が果たしてどのような結果となるものか。
なお、これら北海道におけるトレーニングセールに先立ち、5月9日にはJRA宮崎育成牧場で「九州トレーニングセール」が、そしてその3日後の12日には千葉県船橋競馬場にて「千葉トレーニングセール」がそれぞれ開催されることになっている。九州には67頭。千葉には28頭の2歳馬が上場予定。九州とはいいながら、販売申込者欄を見ると何と北海道の牧場名もずいぶん混じっていて驚く。こうした傾向は千葉の場合も同様で、ほとんどが「北海道産」の2歳馬である。しかも、ダーレー・ジャパンの名前で6頭の申し込みがあり、それらはすべてジェイドロバリー産駒というのも面白い。社台ファームも同じく6頭の上場でこちらは平均価格が上昇しそうな気配である。
JRAブリーズアップセールに触発されてこれから開催される各地のトレーニングセールも活況を呈することを祈りたいところだが、果たしてどんな結果が出るものか。まずは韓国の関係者も訪れる予定の「九州トレーニングセール」を注目したいと思う。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。