2005年05月24日(火) 20:07 0
桜が散り始めて、やっと日高も春らしい陽気が訪れたと思ったら、また天気が崩れ出し、オークスの翌日からは小雨の降る厳しい寒気に見舞われた。そんな中、5月23日(月)はHBA日高軽種馬農協主催のトレーニングセール、翌24日(火)にはひだか東農協主催の「ひだかトレーニングセール」がそれぞれ開催された。
あいにく2日間とも、小雨や寒さといった悪条件下での市場となり、上場者も購買者も、大変な苦労を強いられることになったはずだ。何より堪えたのは寒さである。暖房器具が欲しくなるくらいの低い気温には本州から訪れた購買者も一様に驚いた様子で、上着も冬物が多かった。
まず今回は、23日に開催された日高軽種馬農協のトレーニングセールの模様をお伝えすることにしよう。公開調教が行われたのは、新冠町にある日高育成公社。開始は午前8時半。そして、せりは会場を静内に移し、北海道市場にて午後3時半から実施された。この間の移動の手間がやはり購買者には不評で、何とか同一の場所でせりが実施できないものか、という苦情を複数の馬主から聞かされた。そして、せり開始時間の遅さも不評だった。午後3時半から開始されたせりがすべて終了したのは、午後8時半を回っていたとも聞く。最後は真っ暗な中でのせりとなったようで、「せめて明るいうちにやって欲しい」と誰もが口にしていた。
トレーニングセールのメニューは大きく分けて三つある。一つは公開調教。タイム計時は最後の2ハロンだけだが、併走してくる2頭ずつの間隔が開き過ぎて、流れがとても悪かったように思う。そして二つ目が比較展示。これは1歳馬の市場や当歳の市場でも行われる。三つ目が本番の「せり」である。多くの購買者にとって目当ての馬は上場馬の中の一部であり、やはり長時間にわたって待たされる苦痛にもっと配慮すべきだったと思う。朝の公開調教からせり終了までの12時間は、どう考えても長過ぎる。
上場馬は、全部で126頭(牡68、牝58)。前年より23頭の増加。落札馬は64頭(牡28、牝36)。これも前年比19頭の増。売却率は50.79%。前年比で7.10%の増加となった。ただし、売上げ総額はさほど伸びず、前年3億53万1000円だったのに対して、今年度は3億2265万4500円と、わずか2212万3500円の増加に止まった。当然のことながら、落札馬の平均価格は大幅に下落し、504万1477円は、対前年度比で24.51%もの落ち込みぶりである。
売却率の上昇は確かに明るいニュースではあるが、この平均価格の下落は、主にKRA韓国馬事会と果川(カチョン)馬主クラブの購買によるところが大きい。この両者は、去る5月9日の「九州トレーニングセール」でも、一挙に34頭を落札したが、価格は126万円から210万円の間で、今回も、その“予算枠”は忠実に守られた。果川馬主クラブは牡1、牝5の計6頭。KRA韓国馬事会は牡5、牝11の計16頭を購入。合わせて22頭は、全体の三分の一を占める落札数ではあるものの、最高で220万5000円、最低で105万円と、九州と同じ価格帯を堅守した。
言うなれば、購買力の落ちた日本の地方競馬の馬主層にとって替わった形の韓国関係者ということだが、上場者にとっては、この価格ではペイしない。育成費用を差し引くと馬代金がほとんど残らない価格でも、手元に残しておくよりはここで手離した方がまし、との苦渋の選択を強いられたということだろう。
もちろんせりである以上、希望価格を超えなければ「主取り」でも構わないわけだが、これから先、売れ残りの2歳馬を抱えていてはますます経費がかさむばかりなのは明らかで、やはり、価格が安くても顧客がついた時点で売るしかない上場者が多いのである。
翌24日のひだか東農協主催「ひだかトレーニングセール」については次週に触れたい。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。