2018年03月27日(火) 18:02 23
▲2017年のドバイターフ優勝時のヴィブロス (撮影:高橋正和)
今週末にドバイワールドカップデーが迫ってきました。日本馬14頭が出走予定、さらに一部馬券発売レースもあり、日に日に盛り上がってきますね。
昨年はヴィブロスがドバイターフを制覇し、感動を与えてくれました。道中は内ラチ沿いでロスなくレースを進め、直線では気が付くと「え、ワープした?」というくらいスムーズに外に持ち出されると、見事な末脚を伸ばして差し切りました。
ヴィブロスの切れ味に関しては、デビュー前、友道康夫調教師はこう話していました。
「お姉ちゃん(ヴィルシーナ)より柔らかくて、キレそうな感じがします」
デビューから2年半の時が経ったいま、その言葉の意味がよく分かる気がします。
お姉ちゃんのヴィルシーナと言えば、類まれな勝負根性を見せてくれた馬。並んでからの勝負根性は2歳の頃から光っていました。
ヴィブロスも秋華賞を制覇する前、紫苑S(2着)で勝負根性を見せた点は姉妹での共通点だなぁと感じますが、ドバイで見せたキレ味も持ち味ですよね。
ここからはヴィブロスの強さを担当の安田晋司調教助手の普段の話から迫ってみましょう。
2016年秋華賞。
先に抜け出したパールコードをゴール前で僅かに差し、ヴィブロスはGI初制覇を遂げました。
デビュー前の友道康夫調教師の話通り、キレ味を発揮しての結果でした。安田助手はこう振り返ります。
「秋華賞は特に思い入れのあるレースやったからね。お姉ちゃんのヴィルシーナも担当していて、あの時は『勝った!』と思ったけど、数センチだけ凌げていなかったから…。そのレースを妹のヴィブロスで勝つことができて、本当に嬉しかったです」
▲2016年の秋華賞を制覇、喜びで笑顔が溢れる安田晋司調教助手
懐かしそうな笑顔で、さらにこう続けました。
「秋華賞の賞金でスーツを新調したんやけど、実はドバイではそのスーツを着ていたんですよ」
“秋華賞スーツ”とも言うべきラッキーアイテムで挑んだ海外GI。プラスの運気というのは巡るものですね。冒頭の華麗な脚でドバイターフを制覇しました。
ドバイターフの勝利の裏には、この“秋華賞スーツ”だけでない勝因がありました。
それは食欲。
「ドバイに行ってもヴィブロスの食欲が落ちなかったので、しっかり調教を積むことができたんですよ。メイダン競馬場にはコースの近くに準備運動のできる角馬場がなかったので、ダート1600mのスタート地点にもなっている引き込み線の所でダクを踏んだりしていました。その後にコースを1周ハッキングして、普通キャンターで1周。たぶん、日本馬の中で一番長い時間馬場にいたんちゃうかな」
日本との気候の変化や長距離輸送、初めての環境と慣れないことだらけの中でもしっかりと食べて体力をつけられたことは、海外遠征において何よりの強みだったことでしょう。
「ヴィブロスの馬房での定位置は、カイバ桶の前なんですよ(笑)」
という微笑ましいエピソードさえも、勝利の一因だったのかと思うと頼もしいですね。
「昔からよく食べる方ではあったけど、最近は食べるスピードが速くなったかな。どっしりとしてきました」
一方で、甘えたさんな面もあるといいます。
「普段、洗い場で僕が何かを取りに行ったりして人がいなくなると、ヴィブロスはすぐに鳴くんですよ。なかなかそういう馬っていないんですけどね。他のスタッフに『安田~! ヴィブロスが呼んでるぞ』っていわれたりして(笑)。急いでヴィブロスの元に戻ります」
これはたまたまかもしれないのですが、温厚で優しい雰囲気の調教助手が牝馬を担当すると、よく走る傾向にある気がしています。
あくまで大恵調べですが、これにまさしく当てはまるのが安田助手。ヴィブロスも安心して甘えられるのかもしれません。
さて、振り返ると秋華賞制覇後、年が明けて休養から帰ってくるとヴィブロスは一目見て分かるほど成長していました。安田助手も「だいぶ大きくなって帰ってきましたよ」と当時話していました。
そして昨年、ドバイターフを勝った後にも「まだまだこれから背も伸びて、幅も出てくると思います」と話していた通り、数字には表れませんが、中身が詰まってきました。
今年もカイバ桶前の定位置を守っていただいて、しっかり食べてしっかり調教を積んで、勝負の時を迎えてほしいと思います。
▲トレセンで調整をするヴィブロス(1月31日撮影時)
大恵陽子
競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。