2018年03月28日(水) 18:02
▲父・矢作芳人調教師と娘・矢作麗さん
2016年のドバイターフを勝利したリアルスティール。調教師になる前から海外に目を向けてきた矢作芳人調教師にとって、悲願の海外GI初制覇となりました。しかし、連覇をかけて挑んだ2017年。レース4日前に鼻出血を発症。連覇の夢はついえました。回避の悔しさ、脚元と相談しながらの日々、鞍上のこと、リアルスティールの出来…。娘である麗さんだけが知る、師の秘めた思いとは。
2016年、ドバイターフ勝利。現地に行くことができなかった私は、テレビに映るリアルスティールに「頑張れ!」と声をぶつけました。力強い走りで圧勝といえる内容。先頭でゴールを駆け抜けるリアルスティールを目に焼き付けながら、やっと海外での勝利を掴み取った父に私は誇らしい気持ちでいっぱいになりました。
▲2016年のドバイターフ、ムーア騎手を背に勝利 (撮影:高橋正和)
「ダービーを勝ったときより嬉しい」インタビューで涙ながらに父がこう答えたことに、「お父さんのあの発言は失礼だ」と言われたことがあります。あれは父の本心から出た言葉ですが、決してダービーを軽んじて言ったわけではないことを私は知っています。
父は調教師になるずっと前から海外に目を向けていて、海外のGIレースを勝つことが一つの目標でした。だからこそ、負けても負けても海外遠征を続け、世界のレースを見て、情報を集めてきました。
批判されても海外遠征を続けてきたのは、海外で勝つためには経験を積むことが絶対に必要だと考えていたからです。今まで海外挑戦を続けてきたことが無駄ではなかった、ドバイターフの勝利はその証でもあり、父の努力が報われた瞬間でもありました。
▲「父の努力が報われた瞬間」と麗さん (撮影:高橋正和)
しかし、連覇をかけて挑んだ昨年。リアルスティールは鼻出血で回避することになります。ただ、この鼻出血は肺からの出血ではなく、砂嵐によって鼻粘膜が傷つけられたことによる外傷性のものでした。レースに出られる状態であり、挑戦したかった気持ちもあったそうですがリアルスティールの先々を考えた結果、父は苦渋の決断をしました。
それは相当辛かったのだと思います。月日が経ってもこの悔しさをにじませる父の姿を私は何度も目の当たりにしました。「やめる決断は使う決断より厳しいことだった」父は当時を振り返ってこう話してくれました。・・・
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