トレーニングセールの今後は?

2005年05月31日(火) 19:48 0

 先週に引き続き、日高のトレーニングセールについて書く。5月24日は、ひだか東農協主催の「ひだかトレーニングセール」がJRA日高育成牧場の施設を使用して開催された。

 この日も前日のHBA日高軽種馬農協主催のトレーニングセール同様、どんよりとした雲に覆われた寒い日で、公開調教が終わりかけた頃には雨さえ降り出す悪天候。気温はこの段階で推定7~8℃程度にしかならず、人の吐く息が白くなるほどだった。

 午前8時より公開調教が開始され、6つのグループに分かれた上場馬たちが、一周1600mのダートコースを同僚の馬と併走。最後の直線2ハロンと1ハロンの走破タイムが発表され、それを参考に購買者は上場馬をチェックする。調教技術の向上なのか、最後の1ハロンを11秒台で駆け抜けるのはむしろ普通で、10秒台のタイムも続出した。

 小雨の中、比較展示が行われ、せり開始は午後2時。上場馬は110頭、落札はちょうど半数の55頭と売却率50%はキープした。前日のHBAは126頭上場の64頭落札だったので、ほとんど同じ数字である。ただし、売却総額は、4億7183万8500円と、前年を3888万円1500円下回った。平均価格は857万円余。昨年は上場65頭、落札42頭で総額5億1072万円余、平均価格が1216万円だったことから考えると、やはりHBA同様に、売却率はともかくも、平均価格の下落が著しいと言わざるを得ない。

 最高価格馬は静内・千代田牧場生産の「テディベア2003」(牡、栗毛、父アグネスタキオン、母テディベア)で2835万円。以下、2730万円に2頭、2310万円が1頭と続く。社台系の種牡馬や、新種牡馬が高く買われる傾向がますます顕著になってきた感が強い。

 一方、トレーニングという付加価値を考えると原価割れにしかならない(と思われる)500万円以下の価格帯の馬も21頭を数えた。前日大量落札した韓国関係者(KRA韓国馬事会、果川馬主クラブ)は4頭の購買に止まったが、「安くて実用的な即戦力」を求める購買者が活発に落札し、この市場でも価格の二極分化が完全に定着したと言えるだろう。

 なお、翌週の5月30日(月)に開催された「プレミアセール」(札幌競馬場)は、さらに厳しい結果に終わったようで、55頭上場、落札23頭、売却率41.82%、売上げ総額1億4763万円、平均価格641万8696円だったという。

 最高は2835万円。やはりここでも「高い馬は高い」傾向は変わらず、一方では最低価格52万5000円という落札馬もいて、価格の落差が目立った。文字通り一連のトレーニングセールのここは「千秋楽」であり、後がないことからなのか、欠場馬も72頭中17頭に及んだ。

 こうしてみると、九州から始まったトレーニングセールは、千葉で2ヶ所(中山競馬場のJRAブリーズアップセールと船橋競馬場の千葉トレーニングセール)を開催した後、北海道に移動し、日高で2ヶ所、札幌でのプレミアセールと計6回開催されたことになるのだが、後になればなるほど売却率が低下して行く結果となった。早い者勝ち?と言い切れるかどうかは議論の分かれるところだろうが、購買を予定していた馬主がどこかで目当ての馬を仕入れたら、以後の市場には参加する必要がなくなるわけで、今後は開催時期の設定も見直す主催者が出てくるのではないだろうか。

 そしてもう一つ余談を。4月25日のJRAブリーズアップセールで上場馬に騎乗したのは、いずれも騎手(候補生)だったとのこと。この時期の2歳馬にとって、騎乗者の斤量は軽視できない「ハンディキャップ」かも知れないと思う。例えばひだかトレーニングセールでは、騎乗者の体重が公表されていたが、多くは60キロ台。中には70キロなどという騎乗者もいて、JRAブリーズアップセールの騎乗者と比較すると推定20キロ近い体重差があったのではなかろうか。45キロと65キロでは、同じ2歳馬でも走りっぷりが微妙に変わってしまうように思えるのだが・・・。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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