2005年06月14日(火) 18:16
11日(土曜日)にベルモントパークで行われた北米3冠最終戦ベルモントS(GI、ダート12f)は、単勝2.15倍の圧倒的1番人気に推されたアフリートアレックス(父ノーザンアフリート)が優勝。史上29頭目となるプリークネスS・ベルモントSの2冠を達成した。
ここまでの2冠ではいずれも3コーナー手前から仕掛けて、外から強引にマクって出る戦法をとったアフリートアレックスと鞍上のジェレミー・ローズ。さすがにベルモントSでその手は通じないと見たティム・リッチー調教師が、26歳と若いローズ騎手に「とにかく出来るだけ我慢し、待てるだけ待って追い出せ」と指示。まさにその通りの騎乗で末脚をためこみ、直線で一気に弾けて2着馬アンドロメダズヒーローに7馬身という圧倒的な差をつけての快勝劇となった。
2歳5月にメリーランド州で開催された「ファシグティプトン・ミッドランティック2歳セール」という二流のトレーニングセールに出て、7万5千ドル(約800万円)で購買されたアフリートアレックス。タタソールズ・オクトーバーで7万5千ギニー(約1500万円)で購買された英ダービー馬モティヴェイター、タタソールズ・ホウトンで5万ギニー(約1000万円)で購買された仏ダービー馬シャマーダルなど、今年の3歳世代は欧米ともにセールの安馬が当たりまくる年となっている。
今後は一息入れた後、8月7日にモンマスパークで行われるハスケル招待Hから、8月27日にサラトガで行われるトラヴァーズSに向かう予定となっているアフリートアレックス。その後はいよいよ古馬との対決を迎えることになるわけだが、秋までに相当のステップアップを図らないことには、古馬の一線級と互角に戦うのは難しかろう。
ベルモントSの勝ち方は、確かに印象的だった。だが一方で、ベルモントSのレースとしてのクオリティーは、残念ながら近年でも最も低いと言わざるを得ないものだった。
まず出走メンバーからして、ケンタッキーダービー馬ジャコモと、プリークネス勝ち馬アフリートアレックスを除くと、その他の9頭の中に重賞勝ち馬は前走ローンスターパークのGIII・ローンスターダービーを制したサザンアフリカただ1頭のみ。
更に結果として3着に突っ込んだのが、デビューからここまで6戦を消化していまだ未勝利のノーランズキャット。しかも、半マイル通過48秒62、6ハロン通過1分12秒92というスローペースを、道中ただ1頭ポツンと離れた最後方から追走し、直線だけの競馬をしての3着だったのだ。先行してバテた連中は、いったい何をしていたのやら、という内容のレースだったのである。
現状では、ゴーストザッパー(急遽引退)、ロージズインメイ、ロックハードテンといった強者どもが揃う古馬勢に、とてもじゃないが太刀打ちできないだろうというのが、正直な印象である。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。