週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年06月21日(火) 14:13

 アスコット競馬場がスタンドと馬場の全面改修のために使えず、ヨーク競馬場に舞台を移して行われたロイヤル開催(6月14日〜18日)は、アスコットとヨークの関係者がほぼ完璧と言ってよい連携を見せ、運営面では大成功を収めることが出来た。

 事前に最も懸念されていたのが、競馬場周辺の交通事情だった。ヨークは中世の街並みが現存している実にチャーミングな場所なのだが、それだけに市街を走る主要道路には狭いところが多く、大挙して押し寄せる車の列に大渋滞が起こることが懸念されていた。だが、初日こそ多少の混乱があったものの、2日目以降はスムーズ。警察当局と連動しての車列の誘導が、実に巧く機能したようである。

 例年なら、アスコット近在のウィンザー城から出発し、競馬場のストレートマイル入り口の門から入場してくる、開催名物のロイヤル・プロセッション(王室メンバーの馬車に乗っての入場)。これがどうなるかもファンの大きな関心を呼んだが、普段通りに行われた。王族がいったいどこで馬車に乗り込んだかは公表されなかったが、アスコットよりは2ハロン短いヨークの6Fの直線を馬車の列が静々と進行する光景は、いつもの年と全く変わらぬものだった。

 馬車の上には、今春にチャールズ皇太子と結婚し、王室メンバーとしてはロイヤル開催初参加となる、カミラさんの姿もあった。余談になるが、開催の模様を放送したNHKのスタッフ・出演者の間でしばし話題となったのが、カミラさんの呼称だった。皇太子とつき合いはじめた頃、王室警備隊に所属したパーカーボウルズという隊員の奥さんだったことから、一般的には長く「カミラ夫人」と言われていた人だが、皇太子と結婚したからには「夫人」ではマズいのではないか。故ダイアナさんのように、「カミラ妃」とか「妃殿下」と呼ぶべきではないか、と、ああだこうだの議論があった末、NHK上層部のしかるべき方に確認したところ、「カミラさん」と呼ぶべしというのが、わが国国営放送の下した判断だった。これは、ちょっと意外。と言うことはつまり、皇太子と結婚はしたものの、妃殿下としては認められていないということなのだろうか?

 閑話休題。前述したように、概ね好評だったヨークの王室開催だったが、そんな中で唯一関係者から不平不満が出たのが、芝のコンディションだった。地盤がゆるく芝の根つきが芳しくなかったため、直前にかなりきつくローラーがかけられるなどの処置がとられたが、効果は薄かったようだ。馬が走ると泥のついた芝の塊が後ろに蹴り上げられる光景が、随所に見受けられたのだ。

 それでも、最終日のゴ−ルデンジュビリーSで、6ハロンのトラックレコードが13年ぶりに塗り替えられたように、速い時計は出ていたのだが、「時計が速ければ馬場が良い」という理屈は英国では通用しない。8月までにはしっかりとメンテナンスをして、イボア開催はより良いコンディションで開催して欲しいものである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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