メジロマックイーン唯一の現役後継種牡馬

2018年06月19日(火) 18:00


◆バイアリータークの系統自体がもはや絶滅危惧種に

 地方競馬の2歳戦は、レース映像は見ないまでも、勝ち馬はすべて毎日チェックしていて、たまにではあるものの、めずらしい血統を発見することある。

 最近、ハッ!と思ったのが、6月16日、水沢第1レースの2歳戦を勝ったクイーンソネラという芦毛の牝馬。父のギンザグリングラスは、2008年1月に小倉の3歳未勝利戦で1勝を挙げ、その年の夏には大井へ移籍。さらに川崎に転厩して9歳になった2014年まで現役を続けたが、南関東でも下級条件で2勝を挙げたのみ。中央と南関東で109回走って引退した。南関東では10歳以上の馬は前年にA1級で5着以内がないと出走資格を失うため、9歳秋での引退となったと思われる。

 ギンザグリングラスが単なるマイナー種牡馬でないのは、その父がメジロマックイーンということ。メジロマックイーンの血を持つ種牡馬といえば、初年度産駒からラッキーライラック(阪神ジュベナイルフィリーズ)、エポカドーロ(皐月賞)と、早くも2頭のGI馬を出したオルフェーヴルがいるが、メジロマックイーンはその母の父。メジロマックイーン直系の後継種牡馬として残っているのは、ギンザグリングラスが唯一なのだそうだ。

 メジロマックイーンといえば、引退からもう25年も経つので、簡単に説明しておこう。菊花賞が重賞初勝利で、4歳(旧5歳)からは武豊騎手が主戦となって91、92年の4、5歳時に天皇賞・春を連覇。93年には宝塚記念も制してGI通算4勝。4歳時の天皇賞・秋では1位入線もスタート後の斜行で18着に降着となったことでも話題になった。

 そして何より、メジロアサマ、メジロテイターン、そしてメジロマックイーンという父仔3代の天皇賞制覇は偉大な記録だ。ディープインパクト系が広がりを見せるであろう今後は、そのような馬も何頭か出てくるだろうが、種牡馬ランキング上位のほとんどが輸入馬だった当時としては、きわめてめずらしい記録だった。

 デビュー2戦目で初勝利を挙げたクイーンソネラは、そんなギンザグリングラスの初年度産駒で、現2歳世代にはもう1頭、川崎にミナノキングという牡馬がいるだけ。ミナノキングもすでにデビューし、ここまで2戦して5、6着という成績。なお現1歳で血統登録されているのは1頭のみとなっている。

 ちなみにクイーンソネラの母カヤドーミーティアは、99年に東京大賞典を制したワールドクリークや、ダートGI/JpnI・6勝を含めダートグレード19勝を挙げ種牡馬となったスマートファルコンの妹という活躍馬の血統でもある。

 ギンザグリングラスもそうだが、産駒のクイーンソネラもミナノキングも、メジロマックイーンと同じ芦毛ということでは、現役時を知るファンにとっては、その面影を見ることができるのではないだろうか。

 ギンザグリングラスが種牡馬として貴重なのは、単にメジロマックイーン産駒というだけではない。サラブレッドの三大始祖のうち、バイアリータークの系統の種牡馬は、日本にはもはやギンザグリングラスしか残されていないのだそうだ。今や世界中のサラブレッドはダーレーアラビアンの系統に占められ、ゴドルフィンアラビアンの系統もごくわずか、バイアリータークに至っては、表現は悪いが、もはや絶滅危惧種となっている状況だ。

 なお、ギンザグリングラスが種牡馬になった経緯については、NARウェブハロン『高橋華代子の続・気になるあの馬は…』の第118回をご覧ください。

 http://www.keiba.go.jp/furlong/2018/rensai/03/180518.html

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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