サッカー日本代表とジョッキーの相似性

2018年06月21日(木) 12:00 25


 サッカーワールドカップのロシア大会で、日本がコロンビアに2対1で勝った。次のセネガル戦も勝ち、コロンビアがポーランドに勝つか引き分ければ、日本の決勝トーナメント進出が決まる。その場合、日本は2勝1敗か3勝0敗ということになる。

 1996年のアトランタ五輪で、今のフル代表と同じ西野朗監督が指揮した五輪代表がブラジルを破り、「マイアミの奇跡」と呼ばれた。しかし、そのときはリーグ戦を2勝1敗で終えたのに、得失点差で決勝トーナメントに進むことができなかった。
 
 今回も、同じ2勝1敗でも、セネガルに負けて、ポーランドに勝っての2勝1敗では、決勝トーナメントに進めない可能性がある。セネガルが日本に勝ったあとコロンビアに負ければ2勝1敗、そのうえでコロンビアがポーランドに勝てばこれも2勝1敗で、3チームが同じ勝ち点で並ぶからだ。
 
 4チームの総当たり戦の場合、どういう勝敗の組み合わせになり得るのだろう。算数が苦手な私は、4チームすべてが1勝1敗1分けで並ぶことがあるのかどうか気になったので、書き出してみた。すると、あるんですね、これが。今回も、日本がセネガルと分けて、ポーランドに負けた場合、日本、コロンビア、セネガル、ポーランドが勝ち点4で並ぶ可能性がある。

 それにしても、コロンビア戦後半の大迫勇也選手のヘディングシュートは見事だった。

 私もそうだが、彼が松岡正海騎手に見えて仕方がないという競馬ファンは多いのではないか。

 顔も似ているし、積極的にゴールを狙う姿勢や、ここ一番での決定力、そして、喜びや悔しさなど、感情をあえて表に出して自身を鼓舞しているように見えるところもイメージが重なる。

 ということで、そのほかの日本代表と、ジョッキーをはじめとするホースマンで、ルックスやイメージが重なる組み合わせはあるだろうか。

 まず、西野監督。スマートで、年齢より若く見え、つねに淡々と語り、飄々としたまま思い切った戦術転換をする指揮官。そして、「奇跡」と呼ばれる歴史的ゲームを演出する何かを持っている。

 やはり、藤沢和雄調教師か。

 次に、選手たち。実績や、プレースタイル、チームにおける役割など、必ずしも一致しているわけではないが、思いつくままに並べていくと――。

 長谷部誠選手と福永祐一騎手は、キャプテンシーであったり、自身がいるスポーツ界全体のことを考えているところが重なる。

 香川真司選手と三浦皇成騎手は、ブレイクした時期や、話し方などが、何となくではあるが、重なる。

 山口蛍選手と川田将雅騎手は、背筋が伸びて、周囲をよく見ているところや、「強さ」に通じるものがある。

 長友佑都選手と田中勝春騎手には、ベテランになっても衰えないスピード感がある。

 本田圭佑選手と武豊騎手は、常人とはかけ離れた感覚で自身のプレースタイルを確立し、突出したカリスマになった。

 昌子源選手と藤岡佑介騎手は、ゲーム全体を把握する力があり、目立たないところでの貢献度も高い。

 柴崎岳選手も内田博幸騎手も、ポーカーフェイスを崩さぬまま、鋭くゴールに迫る。

 酒井高徳選手も幸英明騎手も、男前で、外から一気に来るイメージがある。

 武藤嘉紀選手も戸崎圭太騎手も爽やかで、突破力がある。

 元選手や元騎手も加え、敬称略で列挙すると、「三浦知良=武豊」「中田英寿=横山典弘」「釜本邦茂=岡部幸雄」「秋田豊=南井克巳」「川口能活=田原成貴」などなど。

 私が好きなのは昌子選手だ。1対1に強く、カバーリングの上手い彼が後ろにいることにより、1対1に不安のあった吉田麻也選手がガンガン当たって行けるようになり、予選までは見られなかった強さが出てきた。

 センターバックというのは、スライディングタックルだとか、最後の一歩だけ飛ぶようにして相手に当たりに行ったりボールに触るなど、ギリギリのプレーはなるべくせず、できればすべてのボールタッチをインサイドでするくらいが理想だと私は思っている。ファールを少なくし、周りの味方にボールの在り処をわかりやすくすべきだ、と。監督が代わる前の日本のセンターバックはギリギリのプレーが多かったが、昌子選手は安心して見ていられる。

 その昌子選手に重なるからというわけではないが、藤岡騎手も好きだ。

 セネガル戦は、宝塚記念が行われる6月24日の夜、日付が変わる25日午前0時(日本時間)に始まる。

 高校野球や相撲は「砂の文化」だが、サッカーや競馬は「芝の文化」だ、と以前会った人が言っていた。競馬には砂のレースもあるのだが、ともかく、せっかくのビッグイベントなのだから、どちらも存分に楽しみたい。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

島田明宏

作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆~走れ奇跡の子馬~』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

関連情報

新着コラム

コラムを探す