北海道“移住”促進事業

2005年07月05日(火) 22:21 0

 今春より我が浦河町役場の中に「移住促進対策室」なる部署ができて、業務を開始している(らしい)ことは知っていたが、この背景には「団塊の世代」が定年を迎える2年後以降を視野に入れ、人口増加と地域の活性化を目指して、北海道を挙げてこの事業に取り組もうという構想があるらしい。

 昨年度、北海道庁が首都圏などに住む50~60代の男女約1万人を対象に北海道移住へのアンケート調査を実施したという。その結果が「ほっかいどう」154号(北海道広報広聴課発行)に詳細に紹介されている。それによれば、「北海道に住んでみたい」10%、「北海道に一時的に住んでみたい」39%、「(夏季だけなど)季節限定であれば住んでもよい」28%、「(3年だけなど)期間限定であれば住んでもよい」3%、と「80%の人が北海道ライフに関心を寄せて」いるとのことで「このチャンスをどう生かすか、それはあなたのまちの取り組みにかかっています」と続けている。

 こうした北海道側の広報作戦と歩調を合わせるように、浦河町役場の発行する「広報うらかわ」2005年7月号でも、「自然豊かな浦河町のPRと、受け入れ体制の整備」に関する特集を組み、まさしく官民一体となった移住者受け入れのための活動を展開して行こうとしている。

 団塊の世代は平成19年度以降約680万人が定年退職を迎えるという。そのうち首都圏には約180万人が居住しており、定年を前に「第2のふるさと」探しが広がっているとのことで、そうした需要に対する情報量の不足を補うべく今後は北海道移住への実際的な情報提供を積極的に進めて行こうというのだ。

 浦河町の場合は、移住対象を団塊の世代の他、「乗馬愛好者、新規就農希望者、浦河町出身者など」としており、さしあたり今年度より3ヶ年計画で移住者の本格受け入れに取り組むことになっている。新規就農希望者は浦河町に限らず、北海道各地ですでに本格的に着手している市町村がいくつもあり、ライバルは多く、営農のための諸条件が他地域と比較しても勝っているとは言い難い。むしろここで有望なのは、「乗馬愛好者」なのではないか、という気がする。

 生産地を取り巻く環境の悪化はこの欄で繰り返し書いて来た通りである。相次ぐ地方競馬の廃止による需要減は、とりわけ日高の零細生産者を直撃しつつある。他作目との複合経営や複数の生産者が協業化などによってこの難局を乗り切るにはあまりにも時間が不足しており、やがて今よりさらに多くの「遊休牧場」が発生してくることになるだろう。

 こうした「誰も使っていない牧場」の存在が、いずれ地域の社会問題となることは必至で、空家となった牧場を誰かに引き継いでもらうことはいわば地域活性化のための不可欠な条件となるのである。

 以前ならば転廃業した近隣の牧場を吸収して規模拡大に踏み切る生産者が必ずいた。だが、軽種馬需要の先行きが不透明な現在は、土地を新たに求め敷地面積を拡大できる生産者などごく一部に限られる。だいいち規模拡大をしたくとも、よほど優良経営の牧場でなければ融資が受けられない。かくして櫛の歯が欠けるようにして、地域のここかしこに「空家の牧場」が目立ってくるようになってきたのだ。

 「自分の牧場を持ちませんか?」というコピーは、乗馬愛好者の琴線に触れないだろうか。もちろんそれを実現するためには、まず移住してくることが前提条件なのだが…。

 ここに浦河町役場企画課移住促進対策室の連絡先を記しておく。0146-22-2311、内線211、212。ここで「移住希望者の情報」と「空家、空き地などの情報」を収集しているとのこと。興味のある方はご連絡されたし。とりわけ、乗馬に親しむ方々へ強くプッシュしたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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