2005年07月12日(火) 14:51
わずか1週間前、シーザリオの衝撃に揺れたアメリカ・カリフォルニアのハリウッドパークから、身売りのニュースが伝わってきた。
競馬場、及び、その周辺地域の土地と施設が、これまでの所有者であるチャーチルダウンズ社から、ベイメドウズ・ランド社に、2億6千万ドル、日本円にしておよそ290億円で売却されたのである。ハリウッドパーク売却の噂は、業界内ではかなり以前から囁かれていた。アメリカにおける基幹競馬場の1つであり、ハリウッドGCをはじめ、数多くのメジャーレースの舞台となっている場所にも関わらずだ。
理由はひとえに、その立地条件にあった。ハリウッドパーク競馬場は、ロサンゼルス国際空港から車なら10分足らず。ロスのダウンタウンからも20〜30分という、極めて至便な場所に位置しているのである。残念ながら、競馬をやるよりももっと効率的な使い方ができるはずと考える企業やディヴェロッパーが、後を絶たなかったのである。
ハリウッドパーク周辺は、地域としてはそれほど治安の良い場所ではないので、住宅地への転用というのは考えづらい。だが、車で5分も走れば雰囲気の良い住宅街があるから、ショッピングモールなどの建設には絶好のロケーションといえた。あるいは、工場用地としても活用できるし、倉庫スペースとしても利用価値が高い。
例えば、近年盛んに取りざたされていたのが、某航空会社による買収計画だった。太平洋路線と南米路線を仲立ちするカーゴの集積場所として、某航空会社が食指を伸ばしているという噂がしきりだったのである。
確かに、ロス国際空港周辺でまとまった土地を確保できるとすれば、もはやここしかなく、某航空会社は相当高額のオファーを出しているとの噂であった。もしこれがまとまるのだとしたら、競馬場としてのハリウッドパークは、もはや風前の灯火である。実は、アメリカンオークスの取材で訪れた先週のハリウッドパークでも、「ひょっとしたら、これが最後のアメリカンオークスになるかも」と、真顔で語る関係者がいたほどであった。
そんな中で発表された買収先は、ベイメドウズ・ランド社だった。言うまでもなく、ベイメドウズ競馬場の所有会社であり、買収目的は「少なくとも向こう3年間は、継続して競馬開催を行う」というものであった。競馬関係者としては、まずはひと安心という、買収劇の幕切れであった。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。