2018年10月17日(水) 12:00
4つのG1を含む5重賞が行われる、イギリスにおけるシーズンのクライマックス「ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイ」が、20日(土曜日)にアスコット競馬場で行われる。
今季の長距離路線の集大成となるG2ブリティッシュチャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝15F209y)には、今季ここまでこの路線で4戦4勝、今季から導入された「ウェザビー・ハミルトン・ステイヤーズ・ボーナス」の100万ポンドを獲得したストラディヴァリウス(牡4、父シーザスターズ)が出走を予定しており、オッズ2倍を切る人気になる模様だ。
一方、短距離路線の集大成となるG1ブリティッシュチャンピオンズ・スプリント(芝6F)は、一昨年のこのレースの勝ち馬で、9月8日にヘイドックで行われたG1スプリントC(芝6F)で3度目のG1制覇を果したザティンマン(セン6、父エキアーノ)が、3.5倍〜4倍のオッズで1番人気。
牝馬路線の総決算となるG1ブリティッシュチャンピオンズ・フィリーズ&メアズ(芝11F211y)は、9月15日にドンカスターで行われたG1セントレジャー(芝14F115y)で牡馬相手に2着に健闘したラーティダー(牝3、父ドゥバウィ)が、オッズ2.25〜2.625倍の1番人気。
そして、今季のヨーロッパ・マイル路線のクライマックスとなる、G1クイーンエリザベス2世S(芝8F)は、ドーヴィルのG1ジャックルマロワ賞(芝1600m)でアルファセントーリ(牝3、父マスタークラフツマン)の2着になった後、9月9日にパリロンシャンで行われたG1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)で、自身2度目のG1制覇を果しての参戦となる仏国調教馬レコレトス(牡4、父ウィッパー)が、4倍前後のオッズ1番人気に推されている。確かに、ここ2戦で同馬が見せた安定した戦いぶりは魅力だが、6月に同コース・同距離で行われたG1クイーンアンS(芝8F)で7着に大敗しているのが懸念材料である。
10月6日にニューマーケットで行われたG1サンチャリオットS(芝8F)で5度目のG1制覇後、ここは7万ポンド(約1056万円)の追加登録料を支払っての参戦となるローレンズ(牝3、父シユーニ)が、オッズ5倍前後の2番人気。ここ8週間で4戦目というローテーションのきつさと、前走後に同馬を管理するK・バーク調教師が「直線コースより、カーブのあるコースのある方が向いている」とコメントしていたのが気懸りだ。
すなわち、1・2番人気にいずれも死角らしきものがあり、そうであるならば、前走ムーランドロンシャン賞でレコレトスから1.1/2馬身差の3着だったエキスパートアイ(牡3、父アクラメーション)を筆頭とした、3番人気以下の馬にもチャンスがあるように思う。
そして、週末までの天候と馬場状態の変化次第では、ロアリングライオン(牡3、父キトゥンズジョイ)が、チャンピオンSではなくこちらに廻って来る可能性が示唆されている。
そして、今季のヨーロッパ10ハロン路線を締めくくる一戦となるのが、G1チャンピオンS(芝9F212y)だ。ここは、誰がどこからどう見ても「三つ巴」の争いだ。
中でも僅差で1番人気に争うことになりそうなのが、ともにジョン・ゴスデンが管理するクラックスマン(牡4、父フランケル)と、ロアリングライオン(牡3、父キトゥンズジョイ)の2頭だ。
昨年のこのレースを7馬身差で快勝し、そのパフォーマンスにレイティング130が与えられて2017年のヨーロッパチャンピオンとなったのがクラックスマンだ。
4歳となった今季、初戦のG1ガネイ賞(芝2100m)を4馬身差で快勝したところまでは良かったのだが、続くG1コロネーションC(芝12F6y)で重賞未勝利馬サロエン(牡4、父キャンフォードクリフス)に頭差に迫られるという思わぬ苦戦を強いられた後、G1プリンスオヴウェールズS(芝9F212y)ではポエツワード(牡5、父ポエツヴォイス)に2.1/4馬身差をつけられる完敗で、ほぼ1年ぶりの黒星を献上。
以降は、7月のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)、8月のG1インターナショナルS(芝10F56y)、10月のG1凱旋門賞(芝2400m)を、すべて「馬場が硬いため」という理由で回避し、ここは4カ月ぶりの実戦となる。この一戦を最後に現役を退くことが決まっており、ここは「目イチ」の仕上げだとは思うが、久々は懸念材料ではある。その一方で、英国は今週になって雨模様が続いており、馬場が渋くなっているのは、この馬には朗報である。
7月のG1エクリプスS(芝9F209y)、8月のG1インターナショナルS(芝10F56y)、9月のG1愛チャンピオンS(芝10F)と、10ハロン路線の王道でG1・3連勝と破竹の快進撃を見せているのがロアリングライオンだ。ただし、その3戦はいずれもGood to Firmという硬めの馬場状態で、同馬にとって雨は歓迎できない材料だ。
降雨量次第だが、アスコットはラウンドコースより、ストレートコースの方が水はけが良いことから、ラウンドコースを舞台としたチャンピオンズSではなく、ストレートコースを舞台としたクイーンエリザベス2世Sに廻る可能性が浮上している。あるいは、降雨量が多くなると、回避の可能性もある。いずれにしても、18日(木曜日)にジョン・ゴスデン調教師が馬場を歩いて、決断する予定だ。
そして、G1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)で首差の2着となった後、前走G3セプテンバーS(AW11F219y)がエネイブル(牝4、父ナサニエル)から3.1/2馬身差の2着だったクリスタルオーシャン(牡5、父シーザスターズ)を加えた3頭が、今年のG1チャンピオンSを狙う「3強」だ。
今週末はオーストラリアでもG1コーフィールドC(芝2400m)という見逃せない一戦が行われるが、目移りするような顔触れが揃う「ブリティッシュ・チャンピオンズ・デイ」にも、ぜひご注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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