週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年08月09日(火) 11:22

 全米歴代4位にあたる8803勝を挙げている名騎手パット・デイが、現役引退を表明した。

 デイは現在51歳。今年3月30日、昨年夏から悩まされていた股関節の痛みを解消すべく、関節のかみ合わせを矯正する手術を受けたデイ。5月18日にチャーチルダウンズで復帰を果たし、騎乗を再開したものの、7月17日にデラウェアパークで乗ったのを最後に、再び戦線を離脱していた。

 デイの妻シーラさんの話によると、デイは7月の下旬から、家族とも離れて、ケンタッキーリバーの川沿いに持つキャビン・ハウスにたったひとりで籠もり、家族を除けば電話連絡にも応じず、自らの将来について考えていたという。熱心なクリスチャンであるデイは、神との対話の末に、現役を退くことを決めたようだ。

 32年間の現役生活で、収得した賞金は2億9791万ドル(約333億円)。92年にリルイーティーでケンタッキーダービーを制覇。プリークネスS・5勝、ベルモントS・3勝、ブリーダーズC・12勝など数々の大レースをものにし、エクリプス賞受賞4回。91年には、競馬の殿堂入りも果たしている。

 84年以来21年連続してケンタッキーダービーに騎乗していたデイ。ところが、前述した手術のために、その記録が今年の5月に途絶えたばかり。このあたりも、現役に執着しなくなった遠因のひとつかもしれない。

 デイは、今後も競馬とは関わっていきたいとしているが、具体的なプランは未定。昨年夏も、騎乗は週末のサラトガに限定し、布教と浄財集めのために全米中の競馬場をツアーして廻っただけに、今後はより宗教活動に没頭するのではないかと、周囲は見ている。

 それにしても、ここ数年の間に、ラフィット・ピンカイ・ジュニア、クリス・マッキャロン、エディー・デラフーセイ、ジュリー・クローン、そしてパット・デイと、一時代を築いた名騎手が相次いで現役を引退。今月末には48歳の誕生日を迎えるジェリー・ベイリーにも、今季が最後という根強い噂が流れている。アメリカの騎手界は、完全に時代の節目を迎えているようだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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