週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年08月16日(火) 15:30

 アメリカのイヤリング・マーケットにおける最重要拠点の1つ「ファシグティプトン・サラトガ・イヤリングセール」が、8月9・10日の両日、ニューヨーク州の避暑地サラトガ・スプリングスで開催された。

 イヤリングセール・サーキットの今季開幕戦となった、7月の「ファシグティプトン・ケンタッキー・ジュライ」において、総売上げ、平均価格、中間価格、主取り率という主要な指標が全て前年より悪化。更に今年のサラトガ市場は、昨年までの3日間セールが2日間セールに縮小し、上場頭数(欠場馬を除く)が前年の191頭から今年は136頭と大幅に減少。果たしてマーケットがどう動くのか、期待よりはむしろ不安の大きい中で行われたセールだったが、予想外の好景気に湧く結果となった。

 上場頭数の減少に伴い、総売上げこそ前年(4570万ドル)を大きく下回る3341万ドルに留まったが、平均価格は前年比6.5%アップの324,417ドル、中間価格が前年比5.9%アップの225,000ドルと、いずれも好調。前年21.5%だったバイバックレートが、上昇はしたものの24.3%という微増に終わり、まずは多くの関係者にとって満足のいく結果となった。

 好況の要因は極めてシンプルながら、上場馬の質が良かったことに尽きるようだ。血統だけで判断すると牡馬よりも牝馬に良いものが多く、牡馬に対して充分な需要があるかどうかが事前の不安材料の1つでもあったのだが、実馬は牡馬の粒揃いが誠に良く、各価格帯で活発な取り引きが展開されることになった。

 最高価格は、2日目に登場した上場番号130番の父ストームキャットの牡馬。母がG1アッシュランドS勝ち馬リングスアチャイムで、血統的にも下馬評の高かった馬なのだが、実馬もいかにも仕上がりの早そうなスピードタイプで、人気沸騰。最後はクールモアの代理人デミ・オバーン氏と、シェイク・モハメドの代理人ジョン・ファーガソン氏というお馴染みの一騎討ちとなり、最後は310万ドルでデミ・オバーン氏が獲得に成功。アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎からデビューすることになった。

 セール2番目の高馬は、初日に登場した父フサイチペガサスの牝馬。カリフォルニアにベースを置く馬主ジェス・ジャクソン氏の代理人が200万ドルで購買。3番目の高値となる110万ドルは2頭いて、1頭は父ジャイアンツコウズウェイの牡馬。最高価格馬と同じデミ・オバーン氏による購買だが、こちらはアメリカで競馬をすることになるとのこと。もう1頭の110万ドルは、BCスプリントの勝ち馬スカートルスカートの半弟となる牡馬で、父はフサイチペガサス。馬主リー・エインシドラー氏が購買し、ジョン・キメル師が管理することになる。

 2番目から4番目の高馬は、フサイチペガサスの子が2頭に、もう1頭はジャイアンツコウズウェイ。今年の3歳が初年度産駒となるこれら若手種牡馬たちの、実績に裏打ちされた人気を、改めて見せつけられた市場となった。

 さて、日本の皆様にとっては気がかりであろう、日本人購買者の動向だが、残念ながら今年の購買はゼロ。1歳馬・2歳馬市場における日本人の外国産馬買い控え現象は、益々顕著になりつつあるようだ。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

新着コラム

コラムを探す