2019年01月15日(火) 18:00
▲やっと洗い場に収まり、松永さんにブラッシングされるイチャキナ
悪戦苦闘の末に何とか洗い場に収まったイチャキナを、まずは松永光晴さん(阿見乗馬クラブ代表)がブラッシングをする。その後、若林佳樹さん(金沢競馬時代のイチャキナの担当厩務員)の手によって、現役時代さながらの馬装が始まった。まず持参した青い肢巻(バンテージ)を巻き始めた。激しい動作ではないが、イチャキナは脚を動かすなど、終始落ち着きがない。それを上手になだめたりいなしたりしながら、手際良く肢巻を巻いていく。
「馬の脚に正しく肢巻を巻けるけるようになって一人前」ベテランの厩務員さんから、以前そう聞いたことがある。馬の脚を保護するのが肢巻の役割だが、むくみを取って脚をスッキリとさせる効果もあると聞く。うまく巻かないと脚元に炎症を起こす原因にもなると言われるほど、繊細な仕事の1つだ。若林さんの手つきはリズミカルかつ鮮やかで、熟練の職人の技だと感心させられた。
▲若林さんが持参した馬具、手にしているのが肢巻(バンテージ)
肢巻から始まり、ゼッケン、鞍、腹帯、メンコ、頭絡と徐々に馬装が整っていく。白いゼッケンには、イチャキナと黒文字で入っていた。馬装の間、若林さんとイチャキナは何度も視線を合わせていた。「目と目で通じ合う〜」歌謡曲にそんな歌詞があったと記憶しているが、イチャキナと若林さんは正にそうだった。
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佐々木祥恵
北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。
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