2019年01月24日(木) 18:00
冬季繁殖馬セールが昨日行われた
日高の「繁殖馬セール」は秋と冬にそれぞれ開催されるが、冬季のセールはこの時期、毎年1月下旬に行なわれるのが通例だ。今年は23日(水)に、新ひだか町静内にある北海道市場を会場に午後0時開場、午後1時半よりセリ開始というスケジュールで実施された。
結果はすでに報道されているように、上場馬36頭(受胎馬15頭、空胎馬21頭)、落札馬26頭(受胎馬11頭、空胎馬15頭)、売却率72.22%、売り上げ総額は7922万8800円(以下税込表記)、平均価格は304万7262円(受胎馬168万8727円、空胎馬404万3520円)であった。
昨年の冬季セールと比較すると、上場馬が8頭の減少、落札馬が2頭の減少、総額も6827万7600円の減少と大きく下落した形だが、売却率は逆に8.58%上昇した。
昨年は、最後に登場したナニアヒアヒ(当時4歳栗毛、父キングカメハメハ、母ウィキウィキ、上場申し込み者、金子真人ホールディングス)が5022万円(税抜き本体価格4650万円)まで競り上がり、この馬1頭で売り上げ全体の3分の1強を占める結果になった。マカヒキ、ウリウリの半妹という血統背景を持つことからひじょうに白熱した争奪戦が展開され、(有)笠松牧場が落札した。もちろん、これがダントツの最高価格馬であった。
ところで、今年の最高価格は、105番チークトゥチーク(5歳芦毛、父クロフネ、母ムードインディゴ、母の父ダンスインザダーク)の2268万円。やはり昨年と同じく金子真人ホールディングスからの上場馬で、落札者は(有)ホースバンク。ラブリーディを交配し不受胎の空胎馬だが、兄弟にはユーキャンスマイル(3勝、菊花賞3着)やノガロ(3勝、きさらぎ賞4着)などがいて、母ムードインディゴもまた府中牝馬ステークスなど3勝、秋華賞2着という実績馬でもある。
105番チークトゥチークの立ち姿
105番チークトゥチークの落札場面
次点は、208番エルパンドール(6歳黒鹿毛、父ネオユニヴァース、母オータムブリーズ、母の父ティンバーカントリー、販売者エルパンドール・パートナーシップ)の1188万円。落札者は(有)杵臼牧場。
208番エルパンドールの立ち姿
1000万円超えの落札馬はこれら2頭のみであった。なお、受胎馬の最高価格馬は12番キナウ(8歳黒鹿毛、父キングカメハメハ、母リンガフランカ、母の父サンデーサイレンス、販売者・荒牧政美氏)の756万円。落札者はイマジネックス(株)。
受胎馬の最高価格馬は12番キナウ
12番キナウの落札場面
この結果を受け、主催者を代表して(有)ジェイエスの服部健太郎氏は「冬のセールは上場頭数の確保と防疫上の問題があるのですが、その中でも質の高い馬が集まり、この売却率と平均価格を維持できたのは良かったことです。当初、空胎馬の需要を見込んで冬季セールが始まったわけですが、繁殖シーズンに入る時期を迎え、オーナー始め牧場の皆さまもいろいろ検討しながら、質の高い馬を集めて臨もうという現状が表れたセールであったと思います。
例年のように、新種牡馬の仔を受胎している馬も何頭かいましたし、そういう繁殖牝馬に対する関心の高さも見られました。今後に関しては、やはり頭数をできるだけ確保すること。それには、このセールの認知度をさらに上げて、オーナーサイドなどにより知って頂くことが重要だと考えています」と語った。
服部健太郎氏
秋季と比較すると、冬季は確かに毎年頭数の少ないことが大きな悩みである。しかし、今年もそうであったように、生産地では、中途半端な成績の出てしまっている出産経験馬よりも、良血の空胎馬、競馬から上がったばかりの未供用馬の人気が高い。1歳市場の好結果を受け、繁殖牝馬の需要は依然として高く、今後もしばらくは更なる活発な取引が期待できるだろう。
牝馬の価格を底上げする上でも、この繁殖馬セールの存在意義はひじょうに高い。走った牝馬が再び生産地に還流してくるためにも、より多くの牝馬が上場されるようになってくれると嬉しい。
この繁殖馬セールで過去に取引された馬の中から、数多くの名馬が輩出しているのはよく知られており、昨秋以降でも、JBCクラシックを制したアンジュデジールの母ティックルピンク、東京大賞典を制したオメガパフュームの母オメガフレグランスなどの名前が挙がる。またオジュウチョウサンの母シャドウシルエットも当セールで取引された繁殖牝馬だ。
国内唯一の繁殖馬セールとしてひじょうに注目度は高く、来年の冬季セールにはさらなる上場頭数が確保されるように願うばかりだ。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。