2019年05月05日(日) 18:01 40
▲ヴィルシーナで連覇を果たした友道調教師(左)と内田騎手(右) (撮影:下野雄規)
実際にそのGIを勝ったことのあるジョッキーにコース解説をしてもらう当コーナー。ヴィクトリアマイルが行われる東京芝1600メートルについて語るのは、2013年、2014年とヴィルシーナで連覇を果たした内田博幸騎手(48)だ。当時を振り返るとともに、コース攻略のポイントを聞いた。
(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)
――まずは、ヴィルシーナにとって初GI制覇となった2013年から。1番人気に応えての勝利でした。
内田 うれしかったですね。それまでGIで2着が4回もあったので。クラシック三冠は相手(ジェンティルドンナ)が悪かったですし、チャンスと思ったエリザベス女王杯は馬場が悪く、道悪巧者(レインボーダリア)にやられてしまって…。
――レースは2番手からでした。
内田 直線の長い東京ですし、内から他に行きたそうな馬がいたので控えました。
――直線では一旦、馬群に飲み込まれそうにも見ましたが…。
内田 瞬発力タイプというより、ジワジワと伸びるタイプですからね。でもしっかり反応はしていたし、ゴール前では外から来たホエールキャプチャに抜かせない根性も見せてくれました。
▲「ホエールキャプチャに抜かせない根性も見せてくれました」と内田騎手 (撮影:下野雄規)
――会心の騎乗でしたか?
内田 いやいや、自分というよりはチーム全員の勝利ですよ。なかなか勝てずに悔しい思いをしていたはずですが、諦めずに我慢して、いいコンディション作りをしてくれて…。そういうみんなの頑張りが実を結んだのだと思います。
▲「チーム全員の勝利」でヴィルシーナにとって初のGI制覇 (撮影:下野雄規)
――翌2014年は11番人気を覆しての勝利。二桁着順続きでしたが、1年ぶりの復活を果たしました。
内田 試行錯誤の結果でしたね。どうも馬から走る気が失われているような感じがしたので、前走のGII阪神牝馬Sでは、あえて抑える競馬を試してみたんです。結果は11着でしたけど、着差はわずかでしたし、まだ走る気があると感じられました。だから次の本番では、もっと気分よく走らせてあげようと考えました。
――結果、積極的にハナを奪っての逃げ切り勝ち。前年以上に余裕のある勝ち方でしたね。
内田 苦しい期間があったぶん、前の年とはまた違った喜びでしたね。1度スランプに陥った牝馬を立て直すのはなかなか難しいものなんですが…。やはり陣営の頑張りが大きかったと思います。結局これが最後の勝利となりましたけど、GI2勝に、2着もたくさん。素晴らしい馬でした。
▲二度目の勝利は苦しい期間を乗り越えての復活劇 (撮影:下野雄規)
――それではコースのポイントを聞かせてください。最も重要視しているのはどこですか?
内田 最初のカーブ…3コーナーまでの位置取りでしょうね。いかに余計なギアを上げず、負担をかけずに取りたいポジションを取れるか。すなわちスタートが大きなカギになると思います。
――枠順はいかがですか?
内田 馬場状態にもよりますが、基本的には真ん中より少し内あたりかな。周りを見ながら、臨機応変に立ち回れるので。でも馬場が荒れていたり、重馬場だったりすると内は良くないですよね。スタミナをロスするので。例えば自分がピンクカメオで勝ったNHKマイルC(2007年)の時みたいな…。
――そのNHKマイルCは3歳馬同士。ほかでは古馬の一線級が集う安田記念も、東京マイルで行われるGIですね。牝馬限定のヴィクトリアマイルとの違いはありますか?
内田 う~ん。あんまり年齢や性別は気にならないかな。それよりも各馬の個性の方が大きいと思います。
――と、言いますと?
内田 例えばプレッシャーに弱い馬だと、枠や位置取りに左右されますよね。あるいはレースの格が上がった時に、周囲のレベルに萎縮してしまったり。
――馬は周りの“格”が分かるんですか?
内田 すべての馬ではありませんが、敏感に感じる馬もいます。何回か経験することによって、慣れていく場合もありますし。でもそういう部分では牝馬の方が精神的に強いかな。クラスが上がっても、勢いにまかせて頑張っちゃう…みたいな。だから初GIや初重賞挑戦でも、牝馬の方がいきなり通用するケースが多いように感じますね。
――今年はサトノワルキューレとのコンビでの参戦です。
内田 乗ったことがないので何とも言えませんが、ビデオなどでしっかりと研究して臨みたいですね。もちろん当日のパドックや返し馬で感じた感覚も大切にしますよ。
――多くのGIを勝ってらっしゃる内田さんですが、何か秘訣があるんですか?
内田 秘訣なんてないけど、1番は“信じる”ことだと思いますよ。まずは馬を信じる。調教したスタッフを信じる。そして自分自身の経験を信じる―。もちろん上手くいかないことの方が多いですけど、だからこそ信じて、報われた時の喜びが大きいのだと思います。またいつか大きな喜びを味わいたいですね。
netkeiba特派員
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