2019年05月20日(月) 20:01
▲ダービーの戦い方を知る四位騎手が登場 (C)netkeiba.com
GI恒例の「コース解説」企画。実際にそのGIを勝ったことのある騎手に、コースの特徴や攻略方法を教えていただきます。ダービー編の今回は、2007年にウオッカで、2008年にディープスカイで勝利し、連覇を果たした四位洋文騎手が登場。
戦後初、64年ぶりに牝馬でダービーを制した歴史的名牝ウオッカ。堂々1番人気で制したディープスカイ。ダービーの戦い方を知る名手が2頭のレースから、勝利のポイントを明かします。
(取材・文=不破由妃子)
──これまでダービーには16回騎乗されて、2勝2着1回3着3回。その戦い方や勝負になる馬の適性など、熟知されているように思います。
四位 そんなことはないですよ。力のある馬に乗せてもらってきたということです。シックスセンス(7番人気3着)にしてもドリームパスポート(7番人気3着)にしても、人気以上に力のある馬たちでしたから。
ただ、ダービーを勝ち負けできるのはどういう馬かというのは、経験を積むなかでわかってきた気がします。やっぱり切れ味だったりスピードの持続力だったり、なにか“突出した武器”が必要だなと。
──なるほど。各馬の特性に合わせて作戦を立てるとき、コース形態にはどこまで留意しますか?
四位 東京は大きいコースだし、直線も長いですからね。たとえば前半、自分が思ったような展開にならなかったとしても、道中のどこかでカバーできる可能性がある。とはいえ、最初のコーナーの入りが勝負のポイントなのは確かです。できる限り、スムーズに運びたい。
──ウオッカは2枠3番からのスタートで、その1コーナーで少しゴチャつくシーンがありましたよね。
四位 あれくらいは普通です。ゴチャついたうちに入らない(笑)。それにウオッカに関しては、馬に囲まれているほうがレースがしやすいのではという頭があったし、そのなかで馬と自分の呼吸を合わせるというか、調和を大事にして乗りました。
──その結果、抜群の手応えで、しかもまったくコースロスなく4コーナーを回ってきて、馬場の真ん中から突き抜けてきましたよね。
四位 確かに道中のリズムもよかったし、4コーナーでの手応えも抜群でしたけど、半信半疑というか、どうかな…っていう感じでしたけどね。そこで「これなら勝てる!」と思えないのがダービーなんじゃないですかね。
▲64年ぶりに牝馬でダービーを制した歴史的瞬間 (撮影:下野雄規)
──翌年のディープスカイは、後方追走から4コーナーは大外。確信を持って大外に持ち出したように見えました。
四位 改めてレース映像を見るとゾッとしますけどね(苦笑)。
──ゾッとするというのは、4コーナーの進路取りですか?
四位 いえいえ、もうスタートからです。あんなに後ろからいって…。ホント、今見るとゾッとしますよ。あの日はインコースを通った馬が伸びる馬場だったんですよね。それをわかったうえで外に出したんだから、もし負けていたら何を言われていたかわからない(苦笑)。
──確かに(笑)。でも、それだけ自信があったということでは?
四位 そうですね。前走でNHKマイルCを勝って以降も馬がどんどん良くなっているのを肌で感じていたし、何より僕自身の精神面でいえば、前の年に勝たせてもらっていたことが大きかったと思います。
だからこそディープスカイの力を信じることができたし、インコースにこだわってとか、ロスなく運んでとか、そういう馬ではないと思えた。だったら、不利のない大外から攻めてもいいんじゃないかと思ったんです。不利を受けたり、前が詰まって力を発揮できずに終わったりするのが一番嫌でしたからね。
▲「ディープスカイの力を信じ、不利のない大外から攻めた」と四位騎手 (撮影:下野雄規)
──それだけ馬の力を信じていたということですよね。以前、ディープスカイとのダービーを振り返って、「レース中、何の音も聞こえなかった」とおっしゃっていました。それこそ、集中力が極限に達した、いわゆる“ゾーン”なのかなと。
四位 確かにあのダービーではそうでした。ただね、勝ったから言えることです。勝てばなんでもカッコいいことを言えますからね(笑)。
──そうおっしゃいますけど、「1番人気でダービーを勝つ」ということの凄みを感じたんです。
四位 そこはやっぱり、馬を信じることができてこそだと思いますよ。
──紛れが生じにくいコースにあって、それこそが大きなアドバンテージということですね。
四位 そう思います。テクニカルな部分に関してはいろいろと個人差がありますけど、やっぱりその馬のことを一番知っているジョッキーのほうが強いと思います。もちろん、それ以前に馬の絶対能力という違いはあるにせよ、ジョッキーで差が出るとしたら、そこなのかなという気はしますけどね。
(5月21日公開の後編へつづく)
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