週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2005年10月18日(火) 20:24

 アメリカ競馬の祭典ブリーダーズCの開催が、来週末に迫った。今年の舞台はニューヨークのベルモントパーク。昨年のテキサス州ローンスターパークとは異なり、気候的にもトラックの形状もヨーロッパの馬が参戦しやすい開催地だけに、いずれのカテゴリーでも例年以上に質の高い戦いが展開されそうだ。

 このコラムも今週と来週の2週に分けて、今年のブリーダーズCを、レース順を追って展望していきたい。

 なお、出馬登録は17日(月曜日)に締め切られているが、この原稿を起こしている18日(火曜日)現在ではまだリストの発表がなされていないため、今週お届けする展望は想定メンバーで行うことを御了承願いたい。

 まず、開幕戦となる、牝馬によるダート9fのBCディスタフ。軸となるのは、前年に次ぐこのレース連覇を目論むアシャドーで間違いない。前走10月1日にベルモントで行われたベルデイムSを含め、今季もこの路線のG1・3勝。ベルモントパークはここまで6戦4勝と相性も良く、信頼性の高い本命馬と見られている。相手は、昨年のこのレース3着馬ステラージェーン。昨年はウェイン・ルーカス厩舎所属馬だったが、キーンランド・ノヴェンバーに上場されて360万ドルでゴドルフィンが購買し、今年はサイード・ビン・スルール師の管理馬としての出走になる。ドバイで越冬して今季はゆっくりと始動。ベルモントパークで特別とG1ラフィアンHを連勝してここが今季3戦目と、まさにBCだけに照準を合わせたローテーションで出走してくる。本来ならばここに、活きのよい3歳勢が絡んでくるところだが、デビューからG1アラバマSまで4連勝を飾ったスウィートシンフォニーが、古馬との初対決となったベルデイムSで4着に敗退。世代全体のレベルに疑問符を投げかけ、アンティポストでも評価を落としている。

 続いて、2歳牝馬によるダート8.5fのBCジュヴェナイルフィリーズ。評価の高いのは、東海岸の2頭だ。1頭は、前々走サラトガのスピナウェイS、前走ベルモントのフリゼットSと、G1・2連勝中のアデュー。今年のファシグティプトン・コールダーセールで、1回目の公開調教で10秒6の時計を出して30万ドルで購買された、新種牡馬エルコリドールの産駒だ。もう1頭が、これもこの世代が初年度産駒となるティッツナウを父に持つフォークロア。スピナウェイSではアデューに1馬身後れをとっての2着だったが、前走ベルモントのG1メイトロンを14馬身差勝ち。今の勢いならスピナウェイSの着順が入れ換わってもおかしくないと見る者も多い。順当ならこの2頭の一騎討ちと見られている。

 初めて芝が舞台となるBCマイル。欧州勢が人気の中心になることが多いこのレースだが、早くからここを目標としていたドバウィーが、クイーンエリザベス2世Sで2着に敗れた後、靱帯の損傷が発覚して引退。フランスにおける近年最強牝馬との呼び声も掛かっていたディヴァインプロポーションズも故障。ムーラン賞、クイーンエリザベス2世Sと連勝中のスタークラフトは、ここよりもメインのクラシック出走に意欲を見せていると言われており、欧州勢はかなりの戦力ダウンを強いられることになった。代わって高い評価を受けているのが、ブラジルからの移籍馬で、移籍緒戦で敗れて以降8連勝を飾っているルロワデサニモーだ。前走カナダのウッドバインで行われたG1アットマイルも7.3/4馬身差で圧勝。管理するボビー・フランケル師が、「(昨年の全米年度代表馬)ゴーストザッパーより強いかもしれない」と惚れ込んでいる逸材である。前年の勝ち馬シングレタリーも、前走10月8日にサンタアニタで行われた西海岸の最終プレップレース・オークツリーマイルを快勝し、磐石の態勢で連覇に挑もうとしている。どうやら、地元勢優勢というのが、目下の見方である。

 続いて、ダート6fのBCスプリント。今年のBC・8レースで最もオッズの低くなりそうな本命馬がいるのが、このレースだ。「ここはこの馬で決まり」と見られているのが、デビューから10戦10勝の負け知らずでここまで来ている3歳牡馬ロストインザフォッグ。前々走サラトガの7fのキングズビショップSで念願のG1制覇を果たした後、古馬との初対決となった前走ベイメドウズのスピードHも、弱敵相手だったとは言え7.3/4馬身差の圧勝。一完歩目の出はそれほどでもないのだが、そこからのダッシュ力が驚異的で、5月にゴールデンゲートで6fの特別ゴールデンベアSを制した時など、オープニング・クォーターが21秒46で、半マイル通過が43秒32、5fの計時が54秒92という、滅多にお目にかかれないラップタイムを叩き出している。ここを無事通過した暁には、シガーの持つ16連勝という記録が視野に入ってくるロストインザフォッグ。フロリダ産で、OBSオーガストセールという3流の市場で4万8千ドルという廉価で購買されたという経歴を持つこの馬こそ、来季のアメリカ競馬界を熱く燃えさせるスーパースター候補だ。と言うことで、ここは彼の走りを見るレース、というのが、大方の見るところである。

 フィリー&メアターフ以降の4レースの展望は、次週のこのコーナーで。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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