ブリーダーランキング

2005年11月01日(火) 16:11 0

 業界紙「馬事通信」(道新スポーツ発行)11月1日号に、10月17日現在における中央と地方のブリーダーランキングがそれぞれ200位まで掲載されている。

 10月17日といえば秋華賞の翌日で、菊花賞の前である。エアメサイアの秋華賞は含まれるがディープインパクトの菊花賞は含まれない。・・とは書いてみたものの、予想通り誰もが感じている印象そのままに社台グループの成績は完全に群を抜いている。しかも、中央のみならず地方競馬ランキングでも同様なのだ。

 まず中央競馬。1位ノーザンファーム。出走頭数446頭、出走回数1783回、勝利頭数189頭、勝利回数258勝。収得賞金額は実に61億1429万8000円。アーニングインデックス2.29。

 続いて2位は社台ファーム。出走頭数406頭、出走回数1792回、勝利頭数164頭、勝利回数209勝。収得賞金41億7532万5000円。アーニングインデックス1.72。この時点で両者を比較すると、ノーザンファームに軍配が上がるのだが、社台ファームとて全体から見れば平均を大幅に上回る成績を残している。そして、早くもこの両者だけで収得賞金が軽く100億を超えてしまうことにも絶句せざるを得ない。

 3位は社台コーポレーション白老ファーム。出走頭数173頭、出走回数743回、勝利頭数54頭、勝利回数68勝。収得賞金16億8649万4000円。アーニングインデックス1.63。ちなみにこの時点で収得賞金が10億を超えているのは、この“御三家”だけである。これにランキング7位の追分ファーム(50頭が229回出走し、20頭で24勝を挙げ、6億1224万9000円を獲得)の分を合算すると以下のようなけた違いの数字が出て来る。

 出走頭数1075頭、出走回数4547回、勝利頭数427頭、勝利回数559回。収得賞金は合わせて125億8836万6000円。しかも年末までまだ二ヵ月半も開催を残している10月半ばでの数字なのだ。今年のG?路線は社台グループとサンデーサイレンスにほぼ塗りつぶされた感があるが、これらの数字にそれが如実に表れている。

 中央のランキングで4位は下河辺牧場(111頭が489回出走し35頭で45勝、9億601万2000円)。5位資生園早田牧場(87頭が394回出走、24頭で33勝、6億9650万4000円)。6位千代田牧場、7位は前出の追分ファーム、8位グランド牧場、9位川上悦夫牧場、10位西山牧場と続く。

 このあたりからは200位までかなり細かな収得賞金による順位がつけられ、主として日高の中小牧場がずらりと並んでいる。そして、出走頭数に比べて勝利頭数や勝利回数、収得賞金などが伸び悩む例が少なくない。アーニングインデックスは簡単に言うと収得賞金を出走頭数で割った数値を指数化したもので、1.00が平均値である。これを上回るほど1頭あたりの収得賞金が多く、下回るほど少ない。普通に考えれば、出走頭数が多くなればなるほど、限りなく平均値に近づくもののように思えるのだが、個別に見て行くと実はかなり大きな差になっていることが分る。具体名は挙げられないが、日高でも名門と言われる知名度の高い牧場の中に、低迷するところが決して少なくないのだ。
 
 さて、もう一方の地方競馬ランキング。かつては中央と地方とではまるで牧場名が一変したものだが、こちらも社台グループが上位独占である。1位がノーザンファーム(153頭で1035回出走、70頭が145勝、4億569万円)。2位社台ファーム(182頭、966回出走、82頭、153勝、3億3113万7000円)、3位社台コーポレーション白老ファーム(50頭、303回、21頭、37勝、2億2711万1000円)。まったく中央と同様の結果になっているのは、各地で実施されている交流重賞での中央所属馬の中に社台グループ生産馬が多頭数いるためか。地方競馬は主催者により賞金格差が相当大きいのだが、あくまでもデータは全国統一の数値をはじき出している。すると当然、南関東4場での活躍馬を生産している牧場ほど有利になるとともに、賞金額の突出している交流重賞での実績がかなり大きな要素となる。

 とにかく、ここまで一方的な結果になってしまっては、「(社台が)憎らしい」「面白くない」などという感情を超越してしまって、むしろ、今後の競馬人気の行方が心配にさえなってくるほどだ。社台グループにしたところで、とりわけ日高の生産者が低迷し続ける現状には歯がゆい思いだろう。年末までまだしばらくあるが、どうやら大勢は決し、日高から見える“今年の競馬”は最後まで意外性のかけらもないような結果に終わってしまうのではないかと思えてならない。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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