ハイレベルかつ混戦模様の愛ダービー

2019年06月26日(水) 12:00

大接戦となった英ダービーの上位馬が再戦

 22日に閉幕したロイヤルアスコットの興奮がいまだ冷めやらぬヨーロッパだが、今週土曜日(29日)にはカラ競馬場でG1愛ダービー(芝12F)という、3歳の大一番が控えている。戦いの構図は、6月1日にエプソムで行われたG1英ダービー(芝12F6y)上位馬たちによる再戦だ。

 皆様のご記憶にも新しいところだと思うが、今年の英ダービーは勝ち馬から3/4馬身差以内に上位5頭が入線するという大接戦だった。すなわち、馬場や展開次第で、着順が入れ替わってもおかしくないほど、力が接近しているのが英ダービー上位馬たちである。

 力が拮抗しているだけでなく、総体的な水準も高いことをうかがわせたのが、ロイヤルアスコット4日目の6月21日に行なわれた、G2キングエドワード7世S(芝11F211y)だった。英国ダービー上位馬4頭の中で、唯一、G1愛ダービーではなく、そちらに矛先を向けたのがジャパン(牡3、父ガリレオ)だったのだが、英ダービーでは3着だった同馬が、G2キングエドワード7世Sを4.1/2馬身差で快勝。秋のG1凱旋門賞(芝2400m)を含めて、今後のこの路線の有力馬の1頭として名乗りを挙げたのだ。

 3着馬があれだけのパフォーマンスを出来るのなら、英ダービー上位馬たちはそれぞれ、相当に高い力量を持っているはずという「三段論法」が成立することから、今週末のG1愛ダービーへの期待が益々高まったというわけである。

 週あたまの段階で、ブックメーカー各社が愛ダービーへ向けた前売りで2.25-2.375倍のオッズを掲げ、1番人気に推しているのがG1英ダービー優勝馬アンソニーヴァンダイク(牡3、父ガリレオ)である。14年9月にゴールドコースで開催された「パティナックファーム・ディスパーザル」にて、110万豪ドルで仕入れてきた牝馬ビリーヴンサクシードに、ガリレオが交配されて生まれた、クールモアによる自家生産馬がアンソニーヴァンダイクだ。

 2歳の7月にデビューすると、11月までの4か月間に7-8Fのレースを7戦消化したから、かなりの頻度で実戦を使われていたことになる。G2フューチュリティS(芝7F)、G3タイロスS(芝7F)の2重賞を制した他、G1ナショナルS(芝7F)2着、G1デューハーストS(芝7F)3着の成績を残した。

 3歳を迎えると一転して10F以上の距離に照準を定め、初戦となったLRダービートライアルS(芝11F133y)を快勝して臨んだ英ダービーを、見事に射止めたのである。 続いてオッズ3.5-4倍で2番手評価となっているのが、G1英ダービー2着のマッドムーン(牡3、父ドーンアプローチ)だ。

 同馬を生産し所有しているのはハムダン殿下のシャドウェル牧場で、管理しているのが御年86歳(愛ダービーの一週間後には87歳になる)という愛国競馬界の重鎮ケヴィン・プレンダーガストだ。

 G3ブルーリバンドS(芝10F)2着、G3キラヴーランS(芝7F)3着などの成績を残した母アーラースの3番仔で、父はこの世代が2世代目の産駒となるドーンアプローチである。

 2歳時の同馬は2戦し、G2チャンピオンジュヴェナイルS(芝8F)を含む2連勝。3歳初戦となったLR愛二千ギニートライアル(芝7F)で2着に敗れて連勝が止まると、G1英二千ギニー(芝8F)でも勝ち馬マグナグレシア(牡3)から4.1/2馬身遅れをとる4着に敗退した。

 父ドーンアプローチが現役時代は8F以下の距離で4つのG1を制した馬ゆえ、マッドムーンはその後もマイル路線の行くか、距離を伸ばしても10F路線かと筆者は睨んでいたので、同馬が英ダービーに向かうと聞いた時にはいささか驚いたのだが、結果はエプソムのタフなコースを見事に乗り切って2着に好走。この距離にも高い適性があることを実証している。

 そして、ブックメーカー各社が3.5-4.5倍のオッズを掲げ、マッドムーンと2番人気を争う位置にいるのが、G1英ダービー4着のブルーム(牡3、父オーストラリア)である。

 英国と米国で走り、英国でLR英ナショナルS(芝5F10y)に勝ち、米国でG3アパラチアンS(d8F)2着などの成績を残した母スウィープステイクの5番仔として、愛国で生まれたのがブルームだ。

 父は、英国と愛国のダービーに加え、G1インターナショナルS(芝10F56F)を制し、14年の欧州3歳牡馬チャンピオンに選出されたオーストラリアで、その初年度産駒の1頭となる。

 2歳時のブルームの成績は5戦1勝。G1ジャンルクラガルデル賞(芝1600m)2着、G2チャンピオンジュヴェナイルSがマッドムーン2着などの成績を残したが、重賞は勝てずに終わっていた。

 3歳になって身が入ったか、10F以上の距離に適性を見出したのか、今季のブルームは初戦のG3バリーサックスS(芝10F)を8馬身差で圧勝すると、続くG3愛ダービートライアルS(芝10F)も2.1/4馬身差で快勝。2番人気として挑んだ英ダービーが、勝ち馬から1/2馬身+ハナ+短首差の4着だった。

 今後は古馬との混合戦となるこの路線で、誰が3歳世代の旗頭となるのか、これを見極める意味でも、G1愛ダービーは見逃せない一戦となりそうだ。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

関連情報

新着コラム

コラムを探す