2005年11月08日(火) 00:00
本日(11月9日)にスタートし、12月19日まで行われるハリウッドパークの秋開催を前に、主催者から驚きの発表があった。この開催を通じて、予定されていた芝のレースが全てキャンセルされることになったのである。
ハリウッドパークの秋開催と言えば、3歳以上による12FのハリウッドターフC(総賞金25万ドル)、同じく3歳以上による8.5FのG1サイテーションH(総賞金40万ドル)、3歳馬による10FのG1ハリウッドダービー(総賞金50万ドル)、更に3歳以上の牝馬による8FのメイトリアークS(総賞金50万ドル)など、芝のビッグレースが目白押しだ。これが全て開催されなくなるのだから、業界内は大騒ぎである。
更にこの影響で、当初は31日間にわたって行われるはずだった開催のうち、11月23日、30日、12月7日、14日の4日をキャンセル。今年の秋のハリウッドパークは、27日間開催に短縮されることも合わせて発表された。
ハリウッドパークはこの夏、経営母体がそれまでのチャーチルダウンズ社から、ベイメドウス・ランド社に変わったばかりだ。新たにハリウッドパークを買収したベイメドウス・ランド社にとって、この秋開催は親会社となって初めて主催する開催だったが、いきなり競馬サークルを驚かすことをしでかしたことになる。
もっとも、混乱の責任はベイメドウス・ランド社にばかりあるわけではない。なぜなら、芝レースの中止は、チャーチルダウンズ社時代からの遺産に問題があったからだ。
ハリウッドパークでは、前回の春夏開催が7月17日に終了した直後から、芝コースの全面改修に乗り出した。従来の「バミューダ芝」を剥がして、「シーディーワーフ・シーショア・パスパラム」と呼ばれる新しいタイプの芝に全面的に張り替える作業に着手したのである。この際、当時の親会社チャーチルダウンズ社は、「ハリウッドパークの1周1マイルの芝コースは、新たな芝と路面、排水システムをもった素晴らしいコースに生まれ変わります。改修は、次回開催が始まる11月9日までには、充分に余裕を持って完了するはずです」と、胸を張ってアナウンスしていたのである。
ところが、天候には充分に恵まれたにも関わらず、実際にはこの新しい芝がうまく根付かず、調教で使用したところ、たちどころに剥がれて蹴り飛ばされてしまったことから、競馬に使用するのは不可能との判断が下ったのだ。
で、この後どうするかと言うと、敷設した「シーディーワーフ・シーショア・パスパラム」を剥がして、従来の「バミューダ芝」をもう一度張り直すというから、チャーチルダウンズ社が立てた元々の計画そのものに無理があったようだ。
もっとも専門家の指摘では、本来ならば粒状の化学肥料を使わなければならないところを、液状の化学肥料を使用するなど、芝の育成とメンテナンスにも大いに問題があったようで、そうなるとミスを犯したのはベイメドウス・ランド社ということになる。
いったい誰がどうやって責任を取るんじゃ、という今回の事態だが、ハリウッドターフCに出走を予定していた馬が、これでジャパンCに矛先を向けてくれるようなら、我が国にとっては追い風となる。
なお、ハリウッドパークの秋開催で芝のレースに用意されていた賞金は、ダートの一般競走に配分される他、北カリフォルニアにあるゴールデンゲート競馬場で開催される芝のレースにも充当されることが決まった。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。