無免許そして酒気帯び運転

2005年11月22日(火) 23:50 0

 去る11月10日。道営ホッカイドウ競馬の門別競馬場では、本年度最後の開催を無事終了した。目標額には届かなかったが、売上げは前年比で1.4%増の約114億6739万円。一応の成績は残せたと言えるだろう。

 とはいえ、前年比で開催日数が3日増えて今年は87日間となっていたのに加え、競馬場別の開催割もかなり大幅に修正していた。すなわち、例年、売上げが極端に落ちる門別開催を10月中旬から11月にかけてのわずか11日間(-7日)まで圧縮し、一方で集客が見込める札幌や売上げ効果の大きい旭川ナイターなどを逆に10日間増加したのである。

 まさしく、売上げ増を見込んでの重点配分となったわけだが、終わってみると、その札幌が大きく躓いたのが痛かった。札幌は開幕(4月20日)より6月末までの32日間。前年より6日も増やし、計画を48億4458万円余としていたが、実際には対計画比86.1%の41億6911万円余に終わり、スタートで弾みをつけることができなかった。

 旭川開催は7月6日より10月13日までの44日間。計画では68億3482万円余を売り上げる予定でいたが、ここでも実際は59億3621万円余と伸び悩み、当初計画ではこの時点で計116億円程度を見込んでいたものの、実際には、旭川終了時でようやく100億円の大台に乗せたところで終わった。

 こうした結果を冷静に分析し、ぜひ来年の開催計画に役立てて欲しいと願わずにはいられない。売上げ増とはいえ、前年比3日間の開催日増があったればこその数字である。1日当たりの売上げ金額は実質的にマイナスとなっているはずだから。

 さて、道営最終日(11月10日)の深夜、とんでもない事件が発生した。今年度、道営ホッカイドウ競馬にてリーディング第2位の成績を残した渋谷裕喜騎手が、酒気帯びと無免許運転で検挙されたのである。

 ほとんど日付が変わる直前の時間帯。場所は、道央自動車道の白老付近でのことという。一説には、渋谷騎手は、所属厩舎での打ち上げに参加し、調教師の用意したタクシーに乗って帰宅した後、自身の車を持ち出して登別温泉まで行こうとしていたらしい。

 今年度の渋谷騎手は、429戦71勝で、収得賞金は5225万9000円。成績と比較すると収得賞金がいかにも少ないように思えるのは、ホッカイドウ競馬に限らず南関東以外の地方競馬に共通する傾向である。何せ、リーディングの五十嵐冬樹騎手でさえ、551戦106勝という成績にもかかわらず、収得賞金は1億1559万円余に過ぎない。そして五十嵐騎手以外は収得賞金がいずれも1億円に達しない傾向がここ何年も続いている。

 渋谷騎手は、昨年リーディング13位(316戦28勝、2707万円)と低迷していた。その前年(2003年)は10位(420戦40勝、4378万6000円)、2002年は11位(340戦29勝、3904万2000円)と成績は中堅クラスというところ。ただし、NARのデータで調べてみると98年から2000年までは、リーディング3位、7位、3位と健闘し、この3年間は収得賞金も1億円を超えていた。

 いわば、数年の雌伏期間の後、今年は見事に復活し大活躍の一年だったということになる。1971年生まれの34歳。デビューは1989年10月。平成の年号と同じく今年で17年目の騎手生活を送っていたベテランである。

 その後のニュースがまったく入って来ないので、今の段階ではまだ分らないことだらけだが、何を措いても「12年間無免許運転を続けていた」という事実には驚愕させられる。報道によれば、渋谷騎手が運転免許を失効したのは93年のことという。その「なぜ免許を失効したのか」も明らかにされていないので、謎が深まるばかりなのだが、更新を怠ったものか、あるいは別の理由(例えば違反の累積など)によるものなのか、それによってまた与える印象も変わって来るだろう。

 とはいえ、何をどう言い換えても、12年間無免許というのは、残念ながら弁解の余地なしと断ずる他ない。愛車はベンツだったというが、なぜホッカイドウ競馬のシーズンオフにでも免許取得をしなかったのだろう。また、門別トレセンから最寄の自動車教習所までは、わずかの距離である。その気になれば、失効した年の冬にでもすぐ取得できたはずなのだ。

 いずれにしても、まず地全協からの処分待ちだが、少なくとも渋谷騎手本人には、事情を説明する義務があるだろう。フアンに支えられてこその競馬である。「いったいなぜ?」と誰しもが疑問に感じている今回の不祥事に、ぜひ納得の行く弁明を期待したい。正直なところ現役続行はかなり難しいと思わざるを得ないが、もし仮に現役復帰を強く願う一部の熱心なフアンがいたとしても、まずは真相を明らかにすることから始めるのが筋だろうから。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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