2019年09月04日(水) 12:00
ここへ来て、ヨーロッパでは2歳戦線が急速に動いている。
8月30日にアイルランドのカラ競馬場で行われたGIIIフレイムオブダラS(芝8F)を制し、デビューから無敗の3連勝で重賞初制覇を果たしたカイエンペッパー(牝2、父オーストラリア)が、GI英国オークス(芝12F6y)へ向けた前売りで1番人気に躍り出た話題は、2日(月曜日)付けの海外ニュースで記したので、詳細はそちらをご参照いただきたい。
先週末のアイルランドでは、GI英国ダービー(芝12F6y)の前売り1番人気に浮上する馬も出現している。
同じく8月30日にカラ競馬場で行われたメイドン(芝8F)を制し、デビュー2戦目にして初勝利を挙げたモーグル(牡2、父ガリレオ)がその馬だ。
同馬の母シャスタイ(その父デインヒル)は、ジョン・ゴスデンが管理した現役時代は2勝を挙げた他、LRポンテフラクトキャッスルS(芝12F)2着の成績を挙げた馬である。ここまで書けば、血統にお詳しい方や、ブラッドストックマーケットの動向に敏感な方は、「あの馬か!」と膝を打っておいでのことと思う。
モーグルは、今年の夏にGIパリ大賞(芝2400m)、GIインターナショナルS(芝10F56y)を連勝したジャパン(牡3、父ガリレオ)の、1歳年下の全弟にあたる馬なのだ。
繁殖牝馬として極めて優秀なシャスタイが産んだ活躍馬は、ジャパンだけではない。モーグルの5歳年上の全兄サーアイザックニュートンは、GIII愛インターナショナルS(芝10F)を制している他、GIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)、GIインターナショナルSといったGIで入着を果たした馬だし、モーグルの7歳年上の全姉シークレットジェスチャーは、GIIミドルトンS(芝10F56y)勝ち馬で、GI英オークス2着、GI独オークス(芝2200m)2着など6つのGIで入着を果たした馬であった。
そして、シャスタイは同馬を所有するニューセルスパークスタッドにとって、打ち出の小槌と言っても過言ではないほどの利益をもたらしている。すなわち、セールに上場された産駒たちは軒並み、超がつく高額で購買されているのだ。例えば、サーアイザックニュートンは13年のタタソールズ・オクトーバーでセッション2番目の高値となる360万ギニー(当時のレートで約6億480万円)だったし、ジャパンは17年のタタソールズ・オクトーバーで130万ギニー(当時のレートで約1億8120万円)だった。そしてモーグルは、18年のタタソールズ・オクトーバーでセッション2番目の高値となる340万ギニー(当時のレートで約5億4193万円)で購買されているのである。
兄や姉と同様に、エイダン・オブライエン調教師の管理下に入ったモーグルは、8月14日にゴウランパークのメイドン(芝8F)でデビュー。ここは、勝ったジオメトリカル(牡2、父ドーンアプローチ)に5.1/2馬身差の2着に敗退したが、2戦目となった8月30日のメイドンではハナを切る積極的な競馬を見せ、2着シェキム(牡2、父ゾファニー)に3.1/4馬身差をつけて初勝利を手にしている。
この結果を受け、大手ブックメーカーのウィリアムヒルとコーラルはいずれも、来年の英ダービーへ向けた前売りで、同馬をオッズ11倍の1番人気に浮上させることになった。
今年の欧州2歳世代には、5馬身差で制したGIIヴィンテージS(芝7F)を含めて4戦4勝というピナトゥボ(牡2、父シャマーダル)という逸材がいて、これはでは同馬が二千ギニーの前売りでもダービーの前売りでも抜けた1番人気に推されていたのだが、初勝利を手にしただけでそのピナトゥボを蹴落としてダービー1番人気の座に躍り出るのだから、相当に見込まれたものである。
モーグルは今後、兄ジャパンと同じようなローテーションを辿るものと見られており、具体的には9月29日にナース競馬場で行われるGIIベレスフォードS(芝8F)が次走になりそうだ。
モーグルは、果たして本物なのかどうか。日本の皆様も同馬の次走にぜひご注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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