2019年10月22日(火) 18:02 229
▲牝馬では10年ぶりに菊花賞へ出走したメロディーレーン
先週はじめ、コラム「GIドキュメント」で取り上げたメロディーレーン。わずか338kgの小さな女の子の菊花賞挑戦は5着という結果に胸が熱くなりました。今回の「ちょっと馬ニアックな世界」は菊花賞翌朝、馬房でくつろぐメロディーレーンの写真(提供:森田直行調教師)を交えながら、改めて菊花賞を振り返ってみましょう。
菊花賞ゴール直後の関係者スタンド。
「5着にきたんじゃない!?」
という森田直行調教師の声にハッとして、スローモーションが映し出されたターフビジョンを凝視しました。
1、2、3…5着!10年ぶりとなる牝馬の菊花賞出走は牡馬相手に末脚をしっかり発揮しました。
1986年以降、菊花賞に出走したのは3頭。1995年ダンスパートナー(5着)、2009年ポルカマズルカ(17着)、そしてメロディーレーン。
▲ゴール前の一コマ、なんとまだ画面外ですが…?
4コーナーではまだ後方にいました。そしてゴール手前、私がスタンドから撮影した写真にもまだ写っていないのですが、このあと5着まで食い込むのですから、森田調教師がおっしゃる「早仕掛けでもバテない脚」を思い知らされました。
実際、騎乗した坂井瑠星騎手もこう話します。
「道中はロスなく運べました。勝負所で少し手応えが怪しくなったのですが、外に出してからしぶとく伸びてくれました。これだけ小柄な馬ですが、素晴らしいスタミナを持っています」
▲じわじわ伸びて結果は5着!
注目を集めたのは彼女の体重でしょう。この日、プラス2kgと体重を増やしながらも340kg。JRA重賞での出走馬最少馬体重を更新しました。
▲馬房でくつろぐメロディーレーン(提供:森田直行調教師)
ちなみに300kg台で長距離(ここでは芝2500m以上とします)を勝った馬は障害ではたまーにいるものの(最近だと今年4月障害未勝利マイネルレオーネなど)、平場での勝利となると1986年4月明石特別マウタピアツや同年1月万葉Sワンダーヒロイン(のちに金鯱賞や阪神牝馬特別で2着)。奇しくも両馬とも騎乗したのは河内洋騎手(現調教師)で、現役当時「牝馬の河内」と異名を持っていましたが、まさしく2頭とも牝馬でした。
マラソン選手と同じで、長距離で小柄なのはプラスではないか、という説もありますが、西日の強いパドックで初めて彼女を見たファンたちは「あれが噂のメロディーレーンか!」、「ホントに小っちゃい」と彼女のコンパクトさに驚きを隠せずにいたようです。
思い返せば2勝馬のメロディーレーンにとって菊花賞は出走枠に入ることが1つ目のハードルでした。数週間前の段階では「何頭か回避しないと厳しいかもしれない」という話も聞こえてきました。
そのため菊花賞の3日前、出馬投票を終えて
「メロディーレーンが菊花賞に入った!」と、森田調教師は出走に漕ぎつけたことにまず喜んでいたのです。
「トビが大きいから、調教でタイムの感覚が分かりづらくなると助手は話していました」とも言います。
菊花賞の翌朝は馬房でゆっくり過ごしたメロディーレーン。背中に少しチップがついているので、ゴロンと寝転がった後なのかな?と推測します。
▲横になった後なのか背中にチップがついています(提供:森田直行調教師)
この後はしばらく休養するとのことですが、「強い心肺ゆえの早仕掛けしてもバテない脚」を武器にまた私たちをワクワクさせてほしいですね。
▲また私たちをワクワクさせてほしいですね!(提供:森田直行調教師)
大恵陽子
競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。