2020年01月18日(土) 12:00
日差しを感じ、大気が新鮮に触れる候。霜解けの黒い土の底には春の生気が満ち満ちている。そこで万花にさきがけて咲くふくいくとした香りのろう梅。枯れ葉色の世界にあって、この木のある一角だけはまぶしい。
春にさきがけて咲くと言えば、年明けの重賞で勝つ明け3歳馬のようなもの。シンザン記念を勝ち桜花賞戦線に名乗りを上げたサンクテュエールは、兄に米G1・2勝のヨシダを持つ才女だが、この寒い時期にあっても、血すじから春の生気を感じ取っていた筈だ。
これに続く京成杯。中山内周りの2000米という皐月賞につながってもいいレースだが、多くは、それよりも賞金を加算してクラシックを見据えた走りをと出走してくる。4年連続で好走してきた葉牡丹賞組が今年は出ていないので、土の底に春の生気を感じたいと思っていても、それとは別のものを探らなければならない。中山の同じ舞台で未勝利勝ちしたゼノヴァースとキングオブドラゴンがいるが、ディープインパクト産駒のゼノヴァースはホープフルSより速いタイムで勝ったところに手応えを感じる。
さらには、京都で未勝利戦を7馬身差で勝ち、出世レースの阪神エリカ賞も勝ったハーツクライ産駒ヒュッゲ。2000米で2連勝した強みがここで生きるかどうかだ。いずれも逃げ切りだったので同型とのかね合いが当然気になるが、スピードがあって二の脚が速いからそうなっているだけで、友道調教師も十分に承知している。ヒュッゲに春の生気を感じるのは、何よりも母が愛国産で欧州のスタミナ血統であること。このところ毎年のようにこの欧州の長距離スタミナ血統が上位に入っており、この時期のタフな馬場には血統の裏付けが大きい。キングジョージの勝ち馬ハービンジャーやノヴェリストの産駒が走ってきたことは、そこに根拠があると言いたい。
血統から春の生気を感じると言うなら、牝馬のスカイグルーヴも無視できない。過去10年牝馬の出走は9頭のみで、これまでは牝馬の扱いは、この時期の中距離戦ではムズカシイと言われてきた。しかしこのスカイグルーヴは特別で、4代母がオークス馬ダイナカール、3代母も祖母もGI馬という名牝。それに父エピファネイアが菊花賞、ジャパンCの勝ち馬で、日米のオークス馬シーザリオを祖母に持つとなれば看過できない。スピードの持続力が目についた2000米の新馬勝ちのシーンは際立っていた。京成杯は2戦目だが、これは昨年の勝ち馬ラストドラフトと同じだから、新しい戦い方かもしれない。
ふくいくとした香りで咲いたろう梅に刺激されて、やがて白梅が一輪、二輪とほころぶ春への動きが本格化していく。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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