2020年01月25日(土) 12:00
冬の裸木は、樹皮がはげ落ちて人肌色になっている。何故そう言うのか。勝負に負けて裸になった人にみたててだが、競馬とつき合う者にはちょっと受け入れ難い。それを言うなら、夕日を浴び空高く扇を半開きした形でひろがる巨木を思いたい。晩秋に落ち葉を舞わせたケヤキが冬を迎えて裸木となり、やがて大きくのび切った枝に新芽が。そこに尽きぬ生命力を感じる、そう言いたい。芽吹きから新緑にかけての、あのきらめくようなケヤキ。その巨木には、そんなときが待っているのだ。
アメリカJCCにはそういう風情があるように思う。あるときは儚く、あるときは心を揺さぶらせ豊かにしてくれる、その曖昧さがこのレースにはある。年長馬が活躍することが多いことで、そんな思いを強くしてきた。
中山の外回りの2200米、とにかくこのコースは難しい。加えてこの時期の馬場だから気が抜けない。向正面の外回りコースに入ってから、最終コーナーまでのほぼ真直ぐなコースでスピードの持続力がもとめられる。当然、この後半はラップが速くなってくる。こうした傾向から、前半はだいたいがスローペースに。中山巧者と言っても、正確には中山外回り巧者でなければ通用しにくい。切れよりパワー、この一言に尽きる。
最近のレースで印象に残っているのが、連覇を達成した10年前の7歳馬ネヴァブションで、ジャパンC、有馬記念は大敗していながら、ここでは一変した走りだった。好位にいて外回りに入って内を突いて進出、4角では2番手に上がっていた。昨年の6歳馬シャケトラも4、5番手から3角で動き、菊花賞馬で4歳のフィエールマンの追撃をアタマ差しのいでいたが仕掛けのタイミングが見事だった。
このシャケトラは1年1ヶ月ぶりの実践で、3年前の5歳馬タンタアレグリアも9ヶ月ぶりの実戦で勝っていた。年季の入った年長組の出番が時折みられるのが、AJCCの見どころでもあるのだ。
今年は、凱旋門賞以来のブラストワンピースの存在が大きく、これこそケヤキの巨木のイメージと言っていい。これに、有馬記念では速いペースを追い掛けて惨敗したスティッフェリオのオールカマーの実績、自分から動いていけるステイフーリッシュ、コース適性の光るミッキースワローと多士済々だ。
4歳馬は、前年のクラシックに出走した組になるが、控えて末脚を生かすレースが板についてきたラストドラフトの成長ぶりに未知の魅力を感じる。心身ともに充実してきたのは確かと言えるからだ。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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