夢と希望を奏でる八戸市場、予定通りの開催へ

2020年06月17日(水) 18:00 17

軒並み中止が続く中だからこそ開催する意義

 今週月曜日、私宅に八戸市場の名簿が届いた。各地のセリが次々に「インターネット入札」へ変更される中、八戸市場は今のところ、従来通りの方式でセリ会場に購買者が集まり、実馬をその場で確認しながら競り合う形式で開催される予定である。

生産地便り

八戸市場の名簿には今年のテーマ「奏」の文字

 新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受け、今年は4月のJRAブリーズアップセールを皮切りに、先頃6月5日に予定されていた千葉トレーニングセールも、インターネット入札へと変更されたばかりである。また5月12日に開催を予定していた北海道トレーニングセールは中止の措置が取られた。さらに今月23日に予定されている九州1歳市場も、やはりネット入札に変えられる予定で、すでに事前の購買登録を終了していると伝えられる。

 あらゆる市場が、これまでのところ全てネット入札、もしくは中止のやむなきに至っている中、八戸市場は、かねて予定していた通り、あくまで従来の形式にこだわっての開催に踏み切る計画なのである。これが実現すれば、コロナ騒動勃発以後、初の「通常開催」になるわけで、どのような市場になるのかが大いに注目される。

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昨年の八戸市場の会場風景

 名簿には、43頭の上場予定馬が掲載されている。八戸市場は、必ず八戸と市場との間にその年のテーマとなる一字が挿入されており、今年は「奏」、「夢と希望を奏でる」八戸市場というわけである。因みに昨年は「勇」、「真(まこと)の勇士はここにあり」であった。

 43頭の上場予定馬のうち、12頭が北海道からの遠征馬である。また1頭は宮城県からの申込馬で、残る30頭が地元青森産馬となっている。

 種牡馬別では、地元青森で繋養されているウインバリアシオンの産駒が11頭(牡9頭、牝2頭)と最多で、続いてJBBA七戸種馬場にいるアルデバランIIの産駒が6頭(牡5頭、牝1頭)となっている。この2頭だけで上場予定馬のおおよそ4割を占める。

 その他では、ダノンシャーク産駒が3頭、ゼンノロブロイ、フリオーソ、ラニがそれぞれ2頭ずつの産駒を上場する。種牡馬は計23頭と、割にバラエティに富む。また性別では牡27頭、牝16頭と、牡馬の割合がかなり高くなっている。

 主催者の青森県軽種馬生産農協では、八戸市場開催に際して「発熱、体調のすぐれない方はご来場をお控えください」「ご来場の際には、マスクの着用をお願い致します」「会場内にアルコール消毒液を設置致しますので、ご利用下さい」「定期的に会場内の換気を致します」と、名簿の冒頭に注意書きがされている。

 おそらくは、入場に際して、検温(額などに当てて瞬時に検温するような方式だと思われる)や、入場者の個人情報(住所氏名、連絡先電話番号)の確認なども徹底されることと思われる。青森県は3月23日に感染者第一号と第二号が出て以来、その後5月7日までに計27例が報告されているとのことだが、それ以後、今日まで新規の感染者はゼロのまま推移している。

 そんな中、いかに小規模とはいえ、八戸市場は、県内外から購買関係者や取材者が一定数訪れる場になるわけで、主催者としても悩ましいところだが、一方では、県内で開催されるサラブレッド市場としては唯一の存在であり、県内の生産者にとっては得難い販売機会となるだけに、何とかこのまま予定通り開催に漕ぎつけたい気持ちが強いはずだ。

「今回の八戸市場は、今後の北海道で開催される市場にも影響が及ぶ可能性がありますから、失敗できないと考えています。いろいろと従来とは異なる運営になってしまうかも知れませんが、どうぞ購買を考えておられる馬主さんや関係者の方々には、ぜひ青森にお越しいただきたいと思いますので、なにとぞ宜しくお願い申し上げます」とは主催者の弁である。私も7月7日には現地入りしてみるつもりでいる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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