3歳短距離路線の充実

2020年07月28日(火) 18:00 11

シリーズ競走へ向けてはさらなる課題も

 7月23日に行われた門別・王冠賞は、中央未勝利から転入して充実ぶりを見せていたコパノリッチマンが重賞初制覇。断然人気に支持されたアベニンドリームは、ゴール前の追撃及ばず、北海優駿に続く二冠はならなかった。

 王冠賞は昨年から『3歳秋のチャンピオンシップ』に加わった。勝ったコパノリッチマン、2着のアベニンドリーム、ともに同シリーズの大井・黒潮盃(8月19日)への出走を検討中とのこと。

 昨年はホッカイドウ三冠を制したリンゾウチャネルに地元では歯が立たなかったリンノレジェンドだが、黒潮盃からダービーグランプリを連勝、3歳秋のチャンピオンシップのボーナス賞金を獲得した。ちなみに、今年の3歳秋のチャンピオンシップの日程は以下のとおり。

 7月23日(木) 門別・王冠賞(1800m)
 8月16日(日) 佐賀・ロータスクラウン賞(2000m)
 8月19日(水) 大井・黒潮盃(1800m)
 8月27日(木) 笠松・岐阜金賞(1900m)
 9月3日(木) 園田・園田オータムトロフィー(1700m)
 9月6日(日) 盛岡・不来方賞(2000m)
 9月6日(日) 金沢・サラブレッド大賞典(2000m)
 9月10日(木) 笠松・西日本ダービー(1900m)
 9月13日(日) 高知・黒潮菊花賞(1900m)
 9月16日(水) 川崎・戸塚記念(2100m)
 10月4日(日) 盛岡・ダービーグランプリ(2000m)

 ダービーグランプリは2018年まで11月下旬に行われていたが(2018年は開催中止からの延期で12月10日)、昨年からはJBCとの関係で2カ月以上も繰り上げられ10月第1日曜日の実施。それによって、特に西日本の対象レースが過密日程となり、今年は西日本ダービーの立ち位置がますます微妙になった。

 同じ笠松の岐阜金賞からは中1週だが、園田オータムトロフィーからはちょうど1週間後、サラブレッド大賞典からは中3日、黒潮菊花賞に至っては西日本ダービーの3日後という日程となった。

 西日本ダービーは、原則として西日本地区の競馬場でそれぞれ生え抜きの馬のみが出走できる。移籍経験のある馬(冬季休催がある競馬場の一時的な移籍は除く)であれば西日本ダービーに出走できないので迷うことはないが、出走資格があって、それなりのレベルにある馬はどちらを使うか悩むことになるだろう。

 その日程を確認していて、あれ?と思ったのは、昨年まで対象レースだった名古屋・秋の鞍がシリーズから外れていたこと。

 一昨年までは、名古屋・秋の鞍が9月中~下旬で、笠松・岐阜金賞が10月中旬に行われていたので、東海地区の3歳の有力馬にとっては、無理のない日程でその2戦に出走できた。それが昨年は3歳秋のチャンピオンシップが過密日程となって、岐阜金賞が8月29日、そこからわずか中4日で秋の鞍が9月3日、さらに西日本ダービー(昨年は高知)が9月16日。「今まで使えていたレースが使えない」という苦言を呈する関係者もいた。

 おそらくそれで名古屋・秋の鞍は、3歳秋のチャンピオンシップから抜けるという判断になったのだろう。今年、秋の鞍はダービーグランプリ後の10月12日(月)となり、距離も昨年までの1800mから1400mに短縮。さらに園田・楠賞(11月4日、1400m)の指定競走となった。

 3歳秋のチャンピオンシップは2000mのダービーグランプリがファイナルとなるため、1700~2100mの中距離戦で構成されているが、秋の鞍はそこから抜けて短距離路線に舵を切ったことになる。短距離の重賞が必ずしも充実しているとはいえない地方競馬で、距離の選択肢が増えるのは歓迎すべきことだろう。

 かつて昭和の時代には中央競馬でも格の高いレースは長距離戦ばかりで、昭和の終わりから平成にかけて徐々に短距離の重賞も充実し、距離別の路線が確立された。地方競馬では条件戦は1400m前後の距離ばかりなのに、重賞は長距離偏重という名残は今でもある。

 ただ地方競馬の場合、主催者ごとに競馬をやっているぶんには層が薄くなってしまうため、特に世代限定戦などは距離別の路線を組むのが難しいという事情もある。それでも南関東では2011年、6月下旬に3歳馬による1200mの優駿スプリントを大井競馬場で新設。その後は、デビューから一貫して短距離のみを使う馬や、クラシック戦線を使われたものの優駿スプリントをきっかけにその後短距離で活躍する馬などが目立ってきた。

 そういう意味では、全国交流である園田・楠賞を核として、3歳馬による1400mまでの短距離路線のシリーズ競走が考えられてもいいのではないか。

 ただシリーズ競走を組むとなると、昨年からの3歳秋のチャンピオンシップがそうであるように、競馬場ごとに長く親しまれてきた重賞の日程を変更せざるをえないという状況が生じかねない。それゆえ全国で連携というのも容易なことではないのだが。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す