【新潟2歳S】来年のクラシックを沸かせるホープを探せ

2020年08月29日(土) 12:00

7年前、このレースを勝った名牝

 姿のいい街路樹のある道には風格があり、ホッとした気分になる。緑が呼ぶ風のせいかもしれない。レースにも、それぞれの特色があり、そこから醸(かも)し出されるものがある。特に競走馬として第一歩を踏み出したばかりのステークスには、その先を読む楽しみがあり、勝ち負け以上に大切なものを感じる。その馬にある可能性を探り、一緒に成長していくようなものだ。姿のいいレースとは、若い馬のさらに成長した戦い方が見られ、強くなったと実感できるレースを言う。新潟2歳Sは、その戦い方から先にはっきりつながると確信できることがたまにあるので、それを見つけるのが醍醐味と言える。

 その典型と記憶に残るいくつかのシーンの中でも、7年前勝ったハープスターの印象は強烈だった。新馬戦は中京の1400米で、7、8番手で脚をため、外を回って直線切れ味鋭く、余力たっぷりに勝っていた。祖母がベガという良血の牝馬で、新潟の直線の長いマイル戦なら魅力十分と一番人気だったが、その勝ち方は想像を超えていた。659米という日本一の長さを誇る新潟外回りの直線があるので、だいたいがスローペースになっているが、それでも川田騎手が「馬が進んで行かなかった」と最後方を追走。残り300米を過ぎても動かず、さすがに届くのかとスタンドではざわつき始めた。

 ところが残り200米、大外から加速すると他馬が止まったかに見える末脚であっという間に突き抜け、なんと後続に3馬身差をつけたのだった。誰しもが父ディープインパクトを頭に浮べ、二冠馬の祖母ベガの血を受けていればと、この先の行く道がはっきり見えていた。17頭ごぼう抜きでスター誕生、上がり3ハロン、32秒5。「馬のリズムを崩さずに」とそれだけを考えて成果が上がれば、若い馬にとってこれ以上のことはない。阪神ジュベナイルFでは、ハナ差届かず敗れたが、人馬は戦い方にぶれがなく、年明けはチューリップ賞から桜花賞馬へと上りつめていた。ここまでの5戦すべてが一番人気。新潟2歳Sで抱いた期待に見事応えた名牝になっていた。

 尚、この時2着だったイスラボニータは、その後はオープン特別、東スポ杯2歳S、共同通信杯と、スタートと折り合いに進境を見せながら3連勝し、皐月賞馬にまでなっていた。課題を抱えながらも勝てる馬を探すことで、クラシックの風を感じることもあるステークスと言っていいだろう。

 ただ今年は、各地で勝ち上がった若駒が揃ってはいるが、スケールダウンした感がある。出走頭数も少なく、どんな風を感じるか微妙なところがある。そこで、幼い面を残しながら阪神で勝ったシュヴァリエローズ、東京で外に持ち出して決め手の光るブルーシンフォニーの可能性に注目してみることにした。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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