【京成杯AH】夏の名残と秋の始動がぶつかり合う

2020年09月12日(土) 12:00

謙虚、忍耐にふさわしい勝ち馬を

 秋競馬の始まりを告げながらも、夏の名残を感じる今週の東西の重賞レース。夏の延長上にあるものと秋の始動を迎えるものとがぶつかり合う。それは、秋気に染まり移ろう姿を見るようなものだ。

 ザクロの実は日々赤味を増していくし、ムラサキシキブはつけている緑色の実がやがて紫色に移っていく。その変化を少しずつ心に刻みながら、一緒に秋の道を歩んで行く。そうした中、木陰にひっそり咲いていたヤブランの、淡い紫色の小さな花が、小粒な種子を露出させて緑から黒紫色へ変わっているのに気がついた。その花言葉が、謙虚、忍耐だと知り、京成杯AHの顔ぶれからそんな馬を探してみたい。

 サマーマイルシリーズの最終戦、当然そこにこだわりを持ってしまうのだが、それはそれとして、やはり秋への移ろいをメインテーマに掲げていく方が現実的だ。また、ハンデ戦だと言うことで、牝馬および3歳馬が有利だと言ってもいいだろう。

 開幕週の中山のマイル戦ということで馬場が良く、だいたいがゆるみないペースで速いタイムがマークされている。最近では、コース改修で新潟で行なわれた2014年だけが例外。関屋記念の1着馬クラレントがそのまま58キロでも止まらず勝っていたが、このケースは通常ではない。

 マイルの走破タイム1分30秒3の日本レコードホルダー、トロワゼトワルが連覇をめざすが、昨年は52キロの軽ハンデを利して先手を取り、千米55秒4の猛ラップで圧巻の逃げ切り勝ち、横山典騎手の一気に行こうという好判断がこのレコードに結びついていた。今年は55キロ、牝馬にとっては微妙な斤量だ。

 先行力を生かすという観点だと、今年の桜花賞で逃げて3着に粘ったスマイルカナが、52キロという軽量で面白い。米子Sでは50キロを生かし、屈指のスピードで3番手から早目に抜け出して勝っていた。中山の芝は2戦2勝。年明けのフェアリーSの勝利がある。

 同じ3歳でも牡馬のルフトシュトロームの方は、54キロ。昨年は夏負けが尾を引き、デビューが遅れていた。中山のマイルで初出走して3戦3勝、ニュージーランドTの勝利がその中にあり、NHKマイルCは出遅れて5着に終っていたが、その後十分に調整されたこの秋は、本領発揮のシーズンとなる。

 夏の名残組からは、53キロの4歳牝馬アンドラステを。重賞は、6月のエプソムC4着、8月の関屋記念3着とじわじわ力をつけている印象。もう一頭は、54キロのミッキーブリランテを。馬群に入れてためる形が取れると持ち味が生きる。

 夏の名残を感じつつ、謙虚、忍耐にふさわしい勝ち馬を。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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