2020年09月26日(土) 12:00
オールカマーの行われる中山競馬場の芝2200米は、特殊なコースと言われて久しい。だからこそ、このコースで好走した実績があれば、ここでは評価することになっている。
レースのある9月下旬、この季節にはこの季節の音があるのに似ている。秋の長雨が木々の葉をひそやかに打つ音、それをきくと、ああ、これが秋の声だと思う。身についた習慣がそうさせているのだ。
これと同じように、このコースだからこその声に、毎年耳を傾けてきた。
その典型的な例として、オールカマーを三連覇したマツリダゴッホを思い出すものは多いだろう。2007年から3年間、これほど中山コースで存在をアピールした馬は少ない。最初の年は4歳時。一月のAJCC、中山2200米で初重賞制覇を達成、その後日経賞中山2500米3着を経て、春の天皇賞11着から休養に入り、夏は一度札幌記念7着を使ってオールカマー一番人気で勝利していた。この年のレースこそ、オールカマーを考えるひとつのセオリーが見えていた。
ひとつが中山のコース実績の有無、次に夏の重賞を走っていたかどうか、近走先行して負けていたものとチェックしていく。
この年の2着シルクネクサス(5番人気)、3着エリモハリアー(7番人気)は、いずれも夏の北海道で走っていた。一方、2番人気でダービー4着以来のサンツェッペリン、3番人気で春の天皇賞13着以来のネヴァグションはいずれも大敗に終っていたのだった。伏兵は夏に走っていて小回り実績のあるものと、それ以後ずっと決めてきた。
因みにマツリダゴッホは、この年に有馬記念、翌年に日経賞と中山2500米でも成果を上げ、10勝のうち8勝が中山、あとの2勝が札幌という生涯成績を残している。
中山2200米がどう特殊かと言うと、スタートしてスタンド前から第一コーナーまでの直線が432米と長く、途中、急坂をのぼらなければならない。これではペースは上がらない。1コーナーから2コーナーを頂点として高低差5.5米の坂を上り、向こう正面に差しかかる地点から今度は一気に坂を下りながらスピードを上げて3コーナー、4コーナーと回り、もう一度直線の急坂をのぼってゴールをめざすのだから、スタミナ、長く続く末脚がもとめられるのだ。この2200米にはAJCCの他にセントライト記念があり、この実績も評価の対象になってきた。
今年はコース実績からは、セントライト記念、日経賞勝ちがある去年2着のミッキースワロー、この夏七夕賞を勝って本格化した去年の5着馬クレッシェンドラヴ、GI以外では重賞で好走しているAJCC2着馬ステイフィーリッシュがピックアップされる。このコースだからこその声に耳を傾けよう。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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