地域に貢献できるまでになった高知競馬

2021年01月19日(火) 18:00 48

寄付という形で大きな財政貢献

 1月17日(日)の高知競馬の売上が10億円を超え、10億4800万円余りになった。これは昨年3月10日に記録した高知競馬1日の売上最高額10億8952万9400円に迫るもの。

 高知競馬であらためてスゴイのは“一発逆転ファイナルレース”と言われる最終レースの売上だ。この日は第6レースに重賞の大高坂賞が行われたのだが、その売上が約2億4千万円だったのに対して、ファイナルレースは約2億5千万円。地方都市の地方競馬の、しかも下級条件のレースで“億”の売上があるというのはやっぱりスゴイ。

 近年の高知競馬は、他場のナイター開催が少なくレース時間が被ることが少ない1~3月は、おおむね週3日間開催(それ以外の時期は基本的に週2日)としているため、必然的に1日の出走頭数が少なくなる。この日の開催でも全11レースのうち7頭立てが3レース、8頭立てが4レースと、少頭数のレースがいくつもあった。これまでは“頭数が少ないと馬券が売れない”というのが常識だったが、そうした常識も覆しているのが、今の高知競馬のさらにスゴイところでもある。

 そして高知競馬ではこの日から1月31日までに行われる7日間の開催で、『新型コロナウイルス感染症対策支援競走』を実施することを発表している。

 その7日間のメインレースを『新型コロナウイルス感染症対策支援競走』として実施し、その売得金の1%相当額を高知県新型コロナウイルス感染症対策助け合い寄付金に寄付するというもの。ちなみにこの場合のメインレースは、18時過ぎの第7(もしくは第6レース)に行われることが多い重賞や準重賞ではなく、最終レースのひとつ前のレースとされている。

 17日は全11レースだったため、その『新型コロナウイルス感染症対策支援競走』として行われた第10レースは1億1497万9200円の売上があり、すなわちこの売上から114万円余りが寄付されることになる。さすがに7日間とも同じように売れることはないだろうが、それでもおそらく7日間の合計で500万円ほどが寄付金となるのではないだろうか。

 新型コロナウイルスの第3波と言われている時期だからということもあったのだろうが、高知競馬が開催日数も多く、売上の多いこの時期に、売上に連動した寄付をするというのは“あっぱれ”といえる。

 今の高知競馬の馬券の売上は、95%以上をネット・電話投票によって占められている。おそらくその大部分は県外からのもので、結果的に『高知県新型コロナウイルス感染症対策』に集められた寄付金のほとんどが県外から集められた(と思われる)というのもスゴイことではある。

 地方競馬は平成の初期には日本全国30場で行われていたのが、2001年(平成13年)の中津競馬に始まる相次ぐ廃止によって、現在地方競馬が行われているのはちょうど半分の15場になった(しばらく開催がない札幌、中京は除く)。

 中津競馬が廃止されたときは、「次は高知競馬か」と噂されるほどの状況だった。しかしどん底だった2008年度の1日平均約4千万円の売上が、今はその15倍以上の1日平均6億円を超えるまでにV字回復したのはご存知のとおり。

 ならば廃止になった競馬場も存続していれば、高知ほどではないにしても、ある程度立ち直れたのではないかというと、必ずしもそうともいえないし、廃止か存続かの判断はほんとうに難しかったと思う。

 おおざっぱに言えば、赤字を税金で補填してまで続ける必要がないという結論が『廃止』という判断。一方で、競馬場が存在することによって数百人の雇用があり、地方都市の競馬場でも年間数十億~数百億円の売上があって、その雇用とお金の動き(すなわち税収)をなくすわけにはいかないという結論が『存続』だった。ホッカイドウ競馬やばんえい競馬では、馬産という大きな産業を失うわけにいかなかったということもあるだろう。地方都市の場合、もう何年も前から“人口流出”が問題となっていて、競馬の廃止・存続は、そのことにも直結したはずだ。

 高知競馬はみずからの努力や工夫で立ち直ったというだけでなく、国難ともいえる事態に、“寄付”という形でその地域に大きな財政貢献ができるまでになったという意義は大きい。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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