英国クラシック展望・牝馬編

2006年01月24日(火) 23:51

 先週の牡馬編に引き続き、英国3歳クラシック展望の牝馬編をお届けしたい。

 1000ギニーで大手ブックメーカー各社が本命に推しているのが、エイダン・オブライエン厩舎のランプルスティルトスキン(父デインヒル)だ。おじにキングマンボ、祖母がミエスクという、ニアルコス・ファミリー秘蔵の良血馬で、2歳時の戦績6戦5勝。このうち2勝は、マルセルブーサック賞(仏G1)とモイグレアスタッドS(愛G1)という実績を残し、各社4倍から4.5倍のオッズを掲げている。

 続いて各社6倍から9倍のオッズで2番人気に推しているのが、ジョン・ゴスデン厩舎のナニーナ(父メディシアン)だ。父はマキャヴェリアンの直仔で、現役時代はロッキンジS、エクリプスSなどを制覇。この世代が初年度産駒となり、見栄えが悪くとも運動能力の高い産駒が多いと、なかなか評判の高い若手種牡馬である。フィリーズマイル(英G1)、プレスティージS(英G3)を含めて、5戦3勝の成績で2歳シーズンを終えている。

 各社9倍から11倍のオッズで2-3番人気に支持しているのが、フランスのG1モルニー賞を制したシルカズシスター(父インチノール)だ。2歳時はミック・チャノンの管理馬だったが、ゴドルフィンがヘッドハンティングし、現在はドバイで調整が積まれている。

 続いて各社11倍前後のオッズで3-4番人気に推しているのが、同じくミック・チャノンの管理馬で、こちらは3歳時もチャノン厩舎に留まることになったフラッシーウィング(父ザフォニック)だ。近親にG1勝ち馬の名が見えない一方、母はG2・2着馬で、それほど悪い血統ではないのだが、04年のタタソールズ・オクトーバーセールPart2という下級の市場で3万2000ギニー(約688万円)という廉価で購買されているところを見ると、馬体的な魅力はほとんどなかった若駒だったのだろう。そんな馬が、ロウザーS、クイーンメアリーS(共に英G2)という2重賞を含めて、6戦4勝の成績を残したのだから立派なものだ。3歳時クラシック制覇を果たせば、シンデレラ・ストーリーのヒロインとしてもてはやされるはずで、そういう意味でも注目したい1頭である。

 重賞勝ち馬以外では、10月1日にニューマーケットで行われた7Fの準重賞オーソーシャープSを制したレースフォーザスターズ(父フサイチペガサス)の評判が高い。03年の世界チャンピオン・ホークウィングの半妹で、兄同様にエイダン・オブライエンが管理している。15倍から17倍のオッズで、各社5-6番人気。

 9月15日にティッペラリーの新馬でデビュー勝ちし、1戦1勝の成績で2歳戦を終えたチェンチコーヴァ(父サドラーズウェルズ)も、エイダン・オブライエンが管理する良血の期待馬だ。こちらは、英愛ダービー連覇に加え、BCターフ2連覇を達成したハイチャパラルの全妹で、各社21倍前後のオッズで7-9番人気となっている。

 一方、オークスで各社13倍前後のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、アレグザンドローヴァ(父サドラーズウェルズ)だ。タタソールズ・オクトーバーpart1で42万ギニー、およそ9000万円で購入されているエリートである。母は1勝馬で、兄姉に重賞勝ち馬がおらず、3代前まで遡ってもG1勝ち馬が出てこない牝系なのにこの値段になったということは、よほど馬体の造りが良かったものと推測される。2歳時の戦績は4戦1勝。デビュー3戦目に勝ち上がった後、フィリーズマイルで2着となったのだが、出遅れながらゴール前で追い上げたレースぶりが印象的であった。母の父シャーリーハイツで、距離延長は大歓迎のクチである。これも管理するのはエイダン・オブライエンだ。

 コーラルがアレグザンドローヴァと並びの1番人気、ウィリアムヒルがアレグザンドローヴァに次ぐ2番人気に推しているのが、1000ギニーの項目で御紹介したチェンチコーヴァ。さらに、ランプルスティルトスキン、ナニーナ、レースフォーザスターズといった馬たちも、1000ギニー同様にオークスでも上位人気に推されている。

 新顔でまず御紹介したいのが、マイケル・スタウトが管理するスコティッシュステージ(父セルカーク)だ。9月にリングフィールドのメイドンでデビュー勝ちをした後、レースフォーザスターズが制したオーソーシャープSで2着となり、2戦1勝の成績で2歳シーズンを終えた馬である。祖母が、オークスやセントレジャーを制した名牝サンプリンセスというファミリーの出身で、各社17倍から21倍のオッズを掲げている。

 デビュー3戦目でようやく初勝利を挙げ、3戦1勝の成績で2歳時を終えながら、各社21倍-26倍のオッズを掲げて伏兵視しているのが、ジョン・ゴスデン厩舎のイノセントエア(父ガリレオ)だ。というのも、初勝利の舞台となったのが、準重賞のワシントンシンガーSだったのである。父は、この世代が初年度産駒となる若手種牡馬。期待が高かったわりには、2歳時の産駒の動きがイマイチ鈍かった(フレッシュマンサイヤーランキング7位)だけに、この馬あたりの頑張りに父の浮沈がかかっていると言えよう。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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