2006年01月24日(火) 23:49
日高のカリスマ・ホースマン岡田繁幸氏が率いる「サラブレッドクラブ・ラフィアン」が今年、平成18年で創立20周年を迎えるとのことで、先週1月20日(金)、静内にて「20周年記念パーティー」が開催された。
参集したのは、日高の生産者を中心に約400〜500人ほどにもなっただろうか。椅子席では到底スペースが足りないため、気軽な立食パーティー形式となった。
冒頭、まず総師の岡田繁幸氏が、持論の「日本競馬活性化論」を約40分間にわたり熱弁した。生産地日高では、岡田氏の持論は広く知られたところだが、果たしてここでも岡田節は健在であった。
岡田氏の視線は、中央競馬の厩舎制度が抱える矛盾や問題点に厳しく注がれる。高すぎる預託料が馬主経済を悪化させ、ひいてはそれが原因で個人馬主の撤退を生んでいる。
なぜ預託料が高すぎるのか。その原因の1つになっているのは厩務員組合の存在であり、真の意味での競争原理が働いていないからだと力説する。
一方の地方競馬は、周知の通り今や青息吐息の状態で、売り上げ減が賞金・諸手当の減額を呼び、「夢のない競馬」に成り果ててしまっている。
そこで中央と地方を包括的に活性化させる試案として、岡田氏は「すべてのJRA競走に地方競馬枠を設けること」を提唱した。未勝利からGIまで“すべて”にである。さし当たって各レースに3頭。さらに、中央競馬の芝コースでのフルゲートは18頭だが、例えば出走申し込みが10頭しかいない場合などもあり、その際には残り8頭を全部地方所属馬に開放すべきだ、とも言う。
これにより、中央競馬は全レースがフルゲートとなり、馬券売り上げ増にもつながるし、地方競馬にとっても、安い預託料で中央出走を目指す馬主が、新たに地方の厩舎へ所有馬を預託するようになる。
その結果、中央のトレセンでは、従来のように入厩馬の確保ができなくなり、地方の厩舎への流出が進めば危機意識が生まれて預託料の削減に踏み切らざるを得なくなる。ウォーキングマシーン導入や担当馬数拡大などで対応する以外になくなり、東西4200馬房で毎月従来価格よりもマイナス20万円の預託料削減が実現すれば年間100億円の資金が最終的に生産地へ還流すると期待される。
そうすれば、市場の活性化や繁殖牝馬への投資も活発になり、生産界はこれまでの不況から脱却できるのではないか、というのが岡田氏の主張である。
さまざまな意見はあるだろう。岡田氏の持論がすべて競馬サークルに受け入れられるものだとは思えない(抵抗勢力が大きすぎて)が、いずれにせよ、目指すのは競馬の隆盛であり、発展である。大いに議論はすべきだと思う。とりわけ、批判の多い中央の厩舎制度は、いつまでも放置できない問題だろう。岡田氏に限らず、「こんなぬるま湯でいいのか」と不満を募らせる馬主はかなり多いに違いない。サラブレッド本体の購入価格よりも、その馬の現役中に支払う預託料の総額の方がずっと高くつくというのは、やはり本末転倒であろう。
岡田氏の競馬論に続き、会場では新種牡馬ロージズインメイのプロモーションビデオなどが流され、開始から約1時間経過したところで乾杯となった。その後は、立食パーティー、スタッフ紹介、抽選会などが行われ、閉会は岡田繁幸氏の長男、紘和氏の挨拶で締めくくって、散会となった。日高を中心に、これまで岡田氏が市場や庭先で馬を購入したことのある生産牧場にはすべて招待状を発送したという。その数、一説には約600軒とか。
なお、2005年終了時におけるサラブレッドクラブ・ラフィアンと夫人の岡田美佐子氏(コスモの冠名)とを合わせた中央競馬での所有頭数は計367頭。うち、324頭が出走し、87頭で111勝を挙げている。日高に本拠地を置く馬主の中では最大規模まで成長したことになる。そして高額馬から低価格馬まで、日高の市場は今、岡田繁幸氏の購買力に支えられていると言っても決して過言ではない。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。