2021年03月06日(土) 12:00
クラシック戦線が本格化する中、出走馬の父馬を見て時の流れを感じさせられる。
昨年まで9年連続リーディングサイアーになっているディープインパクトの名前が、今年の弥生賞ディープインパクト記念には無いのだ。この10年、必ずその産駒は出ていて、6頭もの勝ち馬を出し、しかも、昨年まで5連勝もしていたのだが、今年はその顔ぶれが一変している。
代替わりが進み、ずらりと2代目が勢揃い。それまでディープを追っていたハーツクライの子供のジャスタウェイ、キングカメハメハの子供のロードカナロアにドゥラメンテ、ステイゴールドの子供オルフェーヴル、グラスワンダーからスクリーンヒーローと続くモーリスと多士済々。この先がどうなっていくのか興味津々だ。
草木がいっせいに芽ぶき、かぐわしい季節、芳春が確実に近づいているように思える。やがて、百花が乱れる芳(かんば)しい季節になったとき、景色を彩る花々となるべく、次々と名乗りをあげるのがこれからの前哨戦で、そのひとつとして、どの種牡馬の産駒がというところに的を絞るのも一興だろう。
弥生賞は皐月賞トライアルだが、路線が多様化しているので重要な前哨戦であっても、あくまでもそのひとつである点は押さえておかねばならない。
例年、頭数が少ないことがそれを物語っており、同じ中山の2000米であっても、本番の皐月賞とは異なる。ペースが速くなることはなく、瞬発力、決め手がものを言う。
その点を種牡馬から見ていくと、この5年で連対を果たしたのは、5連勝6連対のディープの他は、ハーツクライの3回、キングカメハメハの1回があるだけなのだ。平均よりやや遅いペースで、上がり3ハロンが良馬場で33秒台、重で36秒台前半というのがこれまでの記録で、上がり最速馬が必ず連対を果たしている。厳しい流れにならないが、我慢強いものでないと上位には無理ということだ。
ここでどこまでやれるか試金石の一戦というものがいる中、史上13頭目となる無敗の勝利をねらうダノンザキッドは、過去3戦いずれも最速の上がりをマークしており、ジャスタウェイ産駒なら、やはり可能性は大だ。粗削りな面がある分、上昇の余地を残していると言える。
スタミナのある血統背景と言えば、ドゥラメンテ産駒のタイトルホルダーとワンデイモアの可能性も魅力がある。新コンビのタイトルホルダーは、力んで走るところがどこまで矯正されるか。距離はもっとあった方がいいというワンデイモアは、ここでどこまで走れるか。追われてしっかり走る馬だから、この2頭とも見所がある。あとは近頃目につく持込馬2頭も。
“種牡馬にも時の流れがうっすらと”
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。