2021年03月16日(火) 18:02
▲最愛のネオユニヴァースへ (C)netkeiba.com
ミルコ騎手とのコンビで、皐月賞、ダービーの二冠を制したネオユニヴァースが、3月8日、天国へと旅立ちました。「ネオユニヴァースに出会えなかったら、僕の人生、どうなっていたかわからない」、突然訪れた最愛のパートナーとの別れ。大きな悲しみの中にいるミルコ騎手が、心からの感謝と敬意を込めて、ネオユニヴァースへの想いをいま改めて語ります。
(取材・構成=森カオル)
※このインタビューは電話取材で行いました
──3月8日、ネオユニヴァースが旅立ちました。種付け中の事故ということで、突然のお別れになってしまいましたね。
ミルコ ネオユニヴァース…、僕が一番愛していた馬です。年齢も年齢だったけど(21歳)、ちょっと早い。もっと生きてほしかった。気分は最悪ですね。
──どういうタイミングで知ったのですか?
ミルコ すぐに社台さんから連絡がありました。「ミルコ、残念なことがあった。今、ネオユニヴァースが亡くなった」って。本当にショックだった。
──以前、「毎年会いに行っていた」とおっしゃっていましたが、最後に会ったのは?
ミルコ 3年前かな。日本の騎手になってからは毎年会いに行っていたけど、2年前はどうしても時間を作れなくて、去年はコロナがあったりで。最後に会ったとき、ものすごく元気だったね。僕のことをジーッと見てた。そのときも、「めっちゃカッコいい馬だなぁ、やっぱりこの馬好きだなぁ」と思ったから、よく覚えています。
──改めてになりますが、一番印象に残っているレースは?
ミルコ それはもう皐月賞ですね。あのレースは、ホントに奇跡だった。ペースが遅くて、馬場が重くてね。そんななか、4コーナーまでは中団の一番内にいて、「ヤバい! 絶対にここから出られない!」と思った。
でも、直線に向いたとき、ちょっとだけスペースが開いたの。そしたら馬が自分からブォーン! と入っていって。ホントに素晴らしかったね。
──直線は、サクラプレジデント(2着)と激しい追い比べに。あのデッドヒートは非常に見応えがありました。
ミルコ あのときの(田中)勝春さん、めっちゃ上手く乗っていて、外から僕のところまですごい勢いで馬を連れてきた。ネオユニヴァースじゃなかったら、あの時点で絶対に止まっていたと思う。
でも、ネオユニヴァースは、ほかの馬とケンカするのがすごく好きだったからね(笑)。馬が近くにくればくるほど、もっと頑張れる馬でした。あのときも耳を絞ってすごかったなぁ。
▲皐月賞のゴール、最後まで耳を絞ってファイティング (撮影:下野雄規)
──以前、「ネオユニヴァースより強い馬はほかにもいたけど、ネオユニヴァース以上にハートが強い馬には出会ったことがない」とおっしゃっていましたが、そのハートの強さというのはそのあたり?
ミルコ そうです。間違いなく、ハートの強さは一番でした。併せにいったら絶対に負けなかった。菊花賞はさすがに距離が長かったけど、それでも最後まで勝とうとする強い気持ちがありました。僕以上に、ネオユニヴァースが全然あきらめていなかった。ホントにすごい馬でしたね。
──現役時代、レース以外ではどんな姿が印象に残っていますか?
ミルコ 普段もけっこう乗りに行っていたけど、一番覚えているのは初めて調教に乗ったとき。めっちゃ暴れて立ち上がったりして、ずっと「ヤバい! ヤバい!」と思ってた(苦笑)。でもね、どれだけ暴れても、人間を落とさない。
──加減していたということですか?
ミルコ そうです。ものすごい賢い馬だなと思った。もちろん全部を見ていたわけではないけど、たぶんネオユニヴァースは放馬したことがないんじゃないかな。うん、絶対にないと思う。けっこうな暴れっぷりだったけどね(笑)。
──「あなたは間違いなく私の人生を変えてくれました」というインスタの言葉、すごく心に響きました。今、改めて、ミルコ騎手にとってネオユニヴァースとは。
ミルコ 絶対に忘れられない馬。とってもとっても感謝しています。あの馬に出会えなかったら、僕の人生、どうなっていたかわからないね。日本にきて、皐月賞で初めてGIを勝って、ダービーまで勝って。特別ルールで乗せてもらった菊花賞も忘れられない。
お父さんになってからも、息子のヴィクトワールピサ、その娘のジュエラーでGIを勝たせてもらった。ネオユニヴァースのおかげで、ホントに人生が変わりました。いっぱいいっぱい幸せをくれた馬。心から「ありがとう」と言いたいです。
▲ダービーのゴール、ミルコ騎手渾身のガッツポーズ (撮影:下野雄規)
▲ネオユニヴァースを永遠に忘れない―― (撮影:下野雄規)
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ミルコ・デムーロ
1979年1月11日、イタリア生まれ。弟のクリスチャン・デムーロはイタリアのジョッキー。1997年から4年連続でイタリアリーディング。1999年に初来日。2003年、ネオユニヴァースの皐月賞でJRAGI初制覇。続くダービーも制し、外国人ジョッキー初の東京優駿制覇。2015年3月1日付けでJRAジョッキーに。
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