ケンタッキーダービー戦線にも新星2頭浮上

2006年02月07日(火) 23:50

 先週のこのコラムで、イギリスのダービー戦線に突如浮上した新星グリークウェルの話題をお届けしたが、時を同じくして、アメリカのダービー戦線にも新星が出現したので御紹介したい。

 ここまでのケンタッキーダービーは、昨年10月に行われたブリーダーズCジュヴェナイルの上位3頭、スティーヴィーワンダーボーイ、ヘニーヒューズ、ファーストサムライに、暮れにハリウッドパークで行われたG1・ハリウッドフューチュリティーの勝ち馬ブラザーデレクを加えた4頭がトップグループを形成。このうちスティーヴィーワンダーボーイとブラザーデレクは1月14日にサンタアニタで行われた8FのG2・サンラファエルSで対戦。ブラザーデレク1着、スティーヴィーワンダーボーイ2着で、いずれも順調な今季の滑り出しを見せ、ここまでは大きな波風の立たない戦線が展開されていた。

 ところが、地殻変動と言っても過言ではない大きな動きが見られたのが、2つのダービープレップが行われた2月4日のガルフストリームパークだった。

 まず、7.5Fの距離で争われたG2・ハッチスンS。ここに2歳時G1・2勝、BCジュヴェナイル3着で、イクスペリメンタル・フリーハンデ第2位の評価を受けたファーストサムライ(父ジャイアンツコウズウェイ)が登場。単勝1.6倍の圧倒的1番人気に支持されたが、2着に敗れる波瀾となった。

 勝ったのは、ここが重賞初挑戦だったキードエントリー(父オナーアンドグローリー)。昨年夏にモンマスパークのメイドンでデビュー勝ちを果たした後、しばらくお休みをして前走1月7日にガルフストリームパークで行われたアロウワンスでカムバック。そこで2勝目を挙げて、ここへ臨んでいた。すなわち、キードエントリーはこれでデビューから負け知らずの3連勝。しかも勝ちタイムの1分27秒12は、これまでの記録を1.3秒も縮めるトラックレコードという、ド派手な競馬で重賞初制覇を飾ったのである。

 母アヴァノウズザコードは重賞入着馬だが、近親に目立った活躍馬はおらず、キードエントリーは04年のファシグティプトン・ケンタッキー・イヤリングセールで、14万5千ドルというお手頃価格で購買されている。次走は、3月4日のG2・フォンテンオヴユースSとのこと。

 続いて行われた9FのG3・ホーリーブルS。こちらも勝ったのは、ここまで負け知らずという強者だった。

 単勝2.6倍という支持に応えて優勝したのは、バーバロ(父ダイナフォーマー)。昨年10月、デラウェアパークのメイドンを8.1/2馬身差でデビュー勝ち。続くローレルのG3・ロレールフューチュリティーも8馬身差で制して重賞初制覇。更に1月1日にコールダーで行われたG3・トロピカルパーク・ダービーも制して3連勝でここで臨んでいたのが、バーバロだった。

 こんな馬のどこが「新星」なのかと訝る向きもおられるかもしれないが、実はバーバロが走ったこれまでの3戦は、舞台がいずれも芝。父がロベルト系のダイナフォーマーで、母ラヴィーユルージュも芝のG3・ノーブルダムセルHの2着馬ということで、管理するマイケル・マッツ調教師はこれまで芝を選んで使っていたのだが、こんなに走るならケンタッキーダービー制覇の夢を見てもバチは当たるまいと、初めてダートを使われたのがホーリーブルSだったのである。ここも難なく制して4連勝を飾ったバーバロ。こちらも次走は3月4日にガルフストリームパークで行われる9FのG2・フォンテンオヴユースSが予定されている。

 なお、同じく2月4日にサンタアニタで行われたG3・シャムSは、ハリウッドフューチュリティーの3着馬ボブアンドジョンが優勝。西海岸の方は、以前として波風の立たないケンタッキーダービー戦線が続いている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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