2006年02月14日(火) 23:50 0
去る2月8日、門別町富浜に新たに開設された「ダーレージャパンコンプレックス」にて、今年度のトップを切る種牡馬展示会が開催された。
晴天微風。この時期としては天候にも恵まれて午前11時の開始時間には、文字通りの黒山の人だかりとなった。予想をかなり上回る見学者になりそうな気配を早々に察した?ダーレー側は、急遽予定していた駐車スペースをさらに広げるべく、ブルドーザーで除雪を開始。最終的には300~400人程度という予測をはるかに上回る600人が参集し、用意していたパンフレットやグッズが足りなくなるというハプニングも起きたほどだった。
午前11時を回ってもまだ見学者が押し寄せてくるほどで、開始をやや遅らせるくらいの盛況ぶり。最初に登場したのは新冠の優駿スタリオンに繋養されているダージー(父シーキングザゴールド)である。そしてグランデラ(父グランドロッジ)、ムーンバラッド(父シングスピール)と続き、4番目にお目当てのアルカセットが登場した。
アルカセット、ムーンバラッド、グランデラ、ダージー
いまさら紹介するまでもなく、アルカセットは昨年11月27日に東京競馬場で行われた第25回ジャパンカップの優勝馬である。私はもちろん初めて見る馬だったが、第一印象は柔軟な動きの高素質馬といったところか。受胎確認後250万円という価格設定も手ごろなのか、すでに120頭を超える申し込みが舞い込んでいるとのこと。
当面、この立派な施設はアルカセット1頭だけで使用するそうだが、何ともぜいたくな話ではある。今のところ新冠の優駿スタリオンに繋養されている前記3頭はここに移動して来る予定がないそうで、だとするならば来年以降はまったく新たな種牡馬がここに加わるものなのか。
いずれにしても、日高に新風を送る存在となるに違いないダーレージャパンの存在には、今後も目を離せない。
ところでそのダーレージャパンの存在を地元の人々はどのように受け止めているのだろうか。
実際に門別町内で生産牧場を営む数人に話を聞いてみたところ、返ってきた答えは概して好意的どころかほとんど大歓迎に近いものがあるという。
門別地区は、従来サラブレッドとともに、アラブ生産も盛んな土地柄であった。しかし、周知のように、今やアラブ生産はほとんど壊滅状態に陥っている。その一方で、サラブレッドに切り替えると言っても、おいそれと簡単には進まない。資金不足と衰退する各地の地方競馬の需要減とが重なり、サラブレッド市場もまた徐々にキャパシティが狭くなりつつある。
それを裏付けるように、昨年、門別町内で生まれて血統登録されたサラブレッドは1182頭と前年より92頭も減少した。この減少幅は日高各町でも最大である。これは紛れもなく軽種馬生産の規模を縮小もしくは廃業した生産者が増えていることを物語っている。
いくつかの大手日高進出組の一つがダーレージャパンだが、実際にすぐ隣までダーレーの所有地となっている牧場などは「次はうちを買って欲しい」と公言しているところが多いのだとか。経営難、高齢化、後継者不足、景気の先行き不透明感など、日高の中小規模生産者を取り巻く環境は依然として厳しいことから、こうした傾向は今後もさらに続くものと思われる。
日高とはいえ、以前にも書いたように、門別町からえりも町まで、その地理的条件はあまりにも違いすぎる。変化の波は西部から徐々に日高路を東へ向かって進みつつあるのだろうが、浦河にいるとその流れがなかなか実感できない。しかし、確実に日高が変りつつあるということだけは間違いなさそうだ。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。