2006年02月14日(火) 23:53
今シーズンの2歳トレーニングセール・サーキットの皮切りとなるOBSコールダーセールが2月7日、アメリカのフロリダで開催された。
アメリカの競走馬市場は今、21世紀に入ってから陥った若干の低迷期から完全に脱却し、マーケットはいずこも好調。ということはつまり、ピンフッカーたちが今年の2歳市場用にと購入した馬たちの仕入れ値も高かったことを意味するわけで、今季の2歳市場に向けて関係者の間では「好景気、しかし売却率は低くなる」との予測が立てられていた。
OBSコールダーセールの結果は、上場頭数が前年より20頭ほど少なくなったこともあって、総売り上げは前年比13.1%減の1296万ドル。平均価格は前年を1.85%上回る13万9430ドルを記録したものの、中間価格は前年を8.33%下回る11万ドル。そしてバイバックレートは予想通り、前年の31.0%を上回る32.6%を記録するなど、期待したような「大盛況」にはならなかった。
内容的にも、平均価格が上がって中間価格が下がったということは、ミドルマーケットが弱かったことを意味し、市況としては決して健全とは言えず、なおかつ全体を引っ張ったかに見えるトップマーケットでも、高い価格で仕入れられた馬が売れ残るケースが少なからずあり、販売側にとっては満足度の低い市場となった。
最高価格は、上場98番の父フォレストキャンプの牡馬。2歳重賞デルマーフューチュリティーの勝ち馬である父にとっては2世代目の産駒で、05年はG1ハリウッドフューチュリティ2着馬ユアテントオアマインらを出し、フレッシュマンサイヤー・ランキング6位だった。
本馬は、祖母がG3勝ち馬と血統もまずまずで、1回めの公開調教で1Fとしては2番めの好タイムとなる10秒2をマーク。大柄で伸びのある馬体も購買者たちの目を引き、65万ドルで購買された。
購買したのは、ドバイの新国王シェイク・モハメド。御本人は会場に居らず、例によって代理人のジョン・ファーガソン・ブラッドストックを通じた購買だったが、なんとこの日はジョン・ファーガソンも会場に姿がないという、私の記憶する限りでは過去に例がない珍しいパターンでの購買だった。会場で実際に購買にあたったのは、ダーレイ・スタッド・マネージメントの責任者ジミー・ベルと、ピンフッカーのジミー・グラッドウェル。果たしてシェイク・モハメドの購買チームが今後どんな編成になるのか、最高価格馬の行く末よりもそちらの方が気になるところだ。
日本人によると見られる購買は、23万ドルで購買された上場番号78番の父イズイットトゥルーの牡馬1頭のみの模様だ。父はBCジュヴェナイル勝ち馬で、父の代表産駒もスプリントG1のフランクデフランシス・メモリアルダッシュの勝ち馬イエスイッツトゥルー。本馬は牝系も、伯父にBCスプリント勝ち馬サーティースルーズがいる系統だから、血統的には間違いなくスピード馬だろう。実際に本馬は、2回めの公開調教で2Fとしては最速の21秒2を計時。大きな素質の一端を披露している。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
合田直弘「世界の競馬」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。