ブリーズアップセールに向けて

2006年03月21日(火) 23:50

 先日、日本競走馬協会より「セレクトセール」上場申し込みについての文書が届いた。今年は来る7月10日から12日までの3日間、苫小牧市のノーザンホースパークにて開催される予定だ。ただし、昨年と大きく異なるのは、当歳のみならず、1歳馬の市場も開催されることである。募集頭数は不明だが、とにかく日本の代表的な「高額馬市場」であることは間違いなく、今年もまた大きな話題を提供してくれることになるだろう。早くも3月20日より申し込み開始となり、締め切りは1歳が4月17日、当歳は4月28日に設定されている。またかなりの競争率になるのではなかろうか。

 まだ北海道は雪の降ることも珍しくはないほどの気候だが、早くもこうして、今年の市場への準備が粛々と進められている。市場といえば、もっとも早いのは4月24日の中山競馬場で開催される「JRAブリーズアップセール」になるが、こちらもまた、本番へ向けての準備が急ピッチで進行中である。

 去る3月21日より、JRA日高育成牧場にて、不肖私が上場馬のカタログ用写真を撮影し始めている。JRA育成馬は、宮崎と日高の2ヶ所で計80頭が育成され、そのうち日高では56頭を管理している。これらの2歳馬は、昨年の7月セレクションセールや8月のサマーセール、その他千葉や八戸などの1歳市場にてJRAが購買した馬であり、来る4月24日に中山競馬場にて販売される予定の馬たちである。

 昨年、初めての試みとなったJRAブリーズアップセールは、予想を上回る好成績を上げた。当日上場された69頭中60頭が落札され、ここで売れ残った馬たちもその後千葉や日高のトレーニングセールに上場され、ほとんどを売り切った。そして現在、3歳となった昨年の取引馬の中から、先週の「フィリーズレビュー」(桜花賞トライアル)を制したダイワパッション(7戦4勝、うち重賞2勝)を筆頭に、12頭が17勝をマークしている。ダイワパッションは、昨年のブリーズアップセール時、公開調教にて最速のタイムを計上し(11.6-11.2秒)、牝馬ながらその仕上がりの早さが買われて810万円から2900万円まで競り上がった。ほとんど争奪戦とも言うべき展開だが、この馬を購入した大城敬三氏(ダイワの馬主)は、大枚をはたいた甲斐があったわけである。

 さて今年はどんな結果が待っているだろうか。昨年、売れに売れた反動がやや怖くもあるところだが、ちょうどタイミング良く重賞勝ち馬が出現したことで、これが何よりの「追い風」となるのではないか。今年は牡牝ちょうど40頭ずつの上場が予定されており、1歳時の購買価格ではもっとも安いのが「ジャンピングレディの04」(牡、栗毛、父ナリタトップロード、210万円)、最高価格馬は「マヤノカプリースの04」(牡、鹿毛、父ボストンハーバー、1743万円)である。ただ、昨年はむしろ牡馬よりも牝馬の売却率の方が高かった経緯があり、その後の競走成績でも牝馬の健闘が目立っている。通常、日高で開催される1歳市場などでは、性別による価格差が顕著に出てしまうのだが、ブリーズアップセールに関しては、必ずしもそうならないようで、今年はさらに「仕上がりの早い牝馬」の需要が高まるかも知れない。

 ところでカタログ用の立ち写真は、(むろんこれが全てではないとはいえ)やはり緊張する。おまけに、折から北海道は発達した低気圧のために強風と降雪にたたられ、大変な撮影となった。写真の出来ばえが何とも気がかりである。

 余談だが、フィルムカメラ派の私にとって、今の時代はどんどんまずい方向に進みつつあるのは間違いない。頻繁に使用していたポジフィルムが製造中止になったり、現像所が廃業し始めている。その最大の元凶は言うまでもなくデジカメの普及である。手軽、便利なことこの上ないのはよく分かるが、それにしてもやりにくい世の中になったものと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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