2022年03月30日(水) 12:00
3月にアメリカのフロリダでスタートした北半球の2歳トレーニングセールサーキットは、4月に入ると舞台をヨーロッパに移す。
その最初の山場となるのが、4月12日(火曜日)と13日(水曜日)の両日にわたってイギリスのニューマーケットで開催される「タタソールズ・クレイヴン2歳ブリーズアップセール」である。
ヨーロッパでも最高の品揃えを誇るこのマーケットだが、昨年はついに出身馬からヨーロッパチャンピオンが出現した。愛国における2歳王者決定戦的位置づけにあるG1ナショナルS(芝7F)、英国における2歳王者決定戦的位置づけにあるG1デューハーストS(芝7F)をダブル制覇したのを含めて、4戦無敗の成績を残し、欧州2歳牡馬チャンピオンに選出されたネイティブトレイル(牡3、父オアシスドリーム)が、昨年の当セールにて21万ギニー(当時のレートで約3408万円)で購買されていたのだ。
ネイティブトレイルは、ヨーロッパランキング2歳部門でも、2位以下の馬に7ポンドもの大きな差をつけるレーティング122を獲得して首位に君臨。5月7日にニューマーケットで行われる3歳3冠初戦のG12000ギニー(芝8F)へ向けた前売りでも、1番人気に支持されている。
昨年のタタソールズ・クレイヴン2歳ブリーズアップセールでは、さらに、G2リッチモンドS(芝6F)を制し、G1モルニー賞(芝1200m)で3着に入ることになったアシンメトリック(牡3、父ショウケイシング)が、15万ギニー(約2435万円)で購買されていたほか、G2レイルウェイS(芝6F)を制し、G1フェニックスS(芝6F)で3着に入ることになったゴーベアズゴー(牡3、父コーディベア)も、15万ギニー(約2435万円)で購買されていた。
上場頭数が137頭だったマーケットとしては、極めて優秀な成績と言えよう。しかも、活躍馬たちはそれぞれ、お手頃な価格で購買されている点も、見逃せないポイントだろう。
今年のカタログ記載馬は、160頭。
種牡馬別で見ると、日本でもG1勝ち馬シュネルマイスターを送り出したキングマンの産駒が4頭、ネイティブトレイルを送り出したオアシスドリームの産駒も4頭が上場を予定しているのを筆頭に、ダークエンジェル、インヴィンシブルスピリット、コーディアック、ロペデヴェガ、ミーマス、ノーネイネヴァー、シーザスターズ、シャマーダル、ショウケイシング、シユーニ、ウォーフロントといったトップサイヤーの産駒が登場予定だ。
2歳トレーニングセールを見に行く楽しみの1つが、この世代が初年度産駒となる種牡馬が、どんなタイプの仔を送り出し、それらが公開調教でどのような動きを見せるかを確認することで、例えば、G1英2000ギニー(芝8F)を制し日本産馬として初の英国クラシック制覇を果たしたサクソンウォリアー(その父ディープインパクト)、17年の欧州3歳牡馬チャンピオンのクラックスマン(その父フランケル)、17年の欧州チャンピオンスプリンターのハリーエンジェル(その父ダークエンジェル)らの、初年度産駒の出来映えを見るのが非常に楽しみである。
個別の上場馬では、母がG1独オークス(芝2200m)勝ち馬ペネロパという上場番号35番の牝馬(父ショウケイシング)、21年のG1フェニックスS(芝6F)勝ち馬エブロリヴァーの半妹となる上場番号65番の牝馬(父ミーマス)、21年にG1ジュライC(芝6F)2着、G1コモンウエルスC(芝6F)2着などの成績を残したドラゴンシンボルの半弟となる上場番号103番の牡馬(父アデイ)、豪州フレミントンのG1オーストラリアンC(芝2000m)2連覇を果たしたハーレムの半妹にあたる上場番号111番の牝馬(父ノーネイネヴァー)、母がG1英1000ギニー(芝8F)3着馬ダバンという上場番号124番の牝馬(父キングマン)、母がG1アルシバイアデスS(d8.5F)勝ち馬ダンシングラグスという上場番号125番の牝馬(父ウォーフロント)、G1愛1000ギニー(芝8F)など2つのG1を制したジャストザジャッジの半弟にあたる上場番号144番の牡馬(父ロペデヴェガ)、母がG3フロール賞(芝2100m)を制している他、G1ガネイ賞(芝2100m)で3着となっているフェイトという上場番号145番の牡馬(父キングマン)などが、注目の血統馬たちである。
タタソールズ・クレイヴン2歳ブリーズアップセールが開催される英国は、ボリス・ジョンソン首相の方針により、コロナウイルス蔓延に際して出されていた規制が既にすべて解除されており、入国に際し、隔離期間を設けたり、PRC検査を受けたりする必要がない。
さらに、御存知のように日本国も水際対策を緩和させており、ワクチン3回接種を済ませていれば、英国からの帰国時にも自宅などで待機の必要もなくなっている。ここ2年ほど、数々の煩雑な手続きが必要な時代に何度か渡英を経験した筆者にとっては、非常にありがたい状況である。
公開調教は、セール前日の4月11日(月曜日)に、ニューマーケットのロウリーマイルコースで行われる他、12日・13日・14日は3日間連続で競馬開催もあり、12日にはG1英1000ギニーの前哨戦となるG3ネルグウィンSが、13日にはG1英2000ギニーの前哨戦となるG3クレイヴンSが組まれている。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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