JRA育成馬展示会

2006年04月11日(火) 23:50

 4月10日(月)、浦河にあるJRA日高育成牧場にて「平成18年度JRA育成馬展示会」が行われた。

 JRA育成馬とは、昨年日高や千葉、青森などの1歳馬市場にてJRAに購買されたサラブレッドで、日高と宮崎(九州)に分かれて調教を積んできた。その数全部で80頭。そのうち日高には56頭が、宮崎では24頭が育成されていた。

 この日の日高は、晴天に恵まれたものの正午になっても気温が4〜5度と寒く、まだ本格的な春の訪れには程遠い気候。来場者も一様に冬のファッションに身を包み、中には毛糸の帽子や手袋を装着している人もいた。

 午前10時。日高各地から集まった生産者や育成業者、そしてJRAの調教師、馬主などの前に育成馬たちが姿を現した。まず構内で比較展示が行われる。一度に13〜15頭程度が登場し、一定間隔で2列に並べられ、その間を縫って、来場者が個別に目当ての馬を見て歩くのだ。

 これらの育成馬は、以前にも触れた通り、来る4月24日に中山競馬場で開催される「JRAブリーズアップセール」に上場される予定になっている。本州へ向け出発する前に、当該馬の生産者など関係者に調教の成果を披露するのが目的である。と同時に、昨年より、JRA育成馬は市場にて販売される方式へと変更されたため、「セールの下見」という要素も大きくなった。かつて「抽選馬」と称されていた時代には、どの馬が当たるかを籤運に任せるより他なかったのだが、昨年から「欲しい馬をいくらでも購入できる」システムへと変更されたのである。

 そんな中、昨年の取引馬には先週の「桜花賞」で注目されたダイワパッションなどがいて、ある程度の結果を残している。今年の上場馬に来年のGI戦線へと駒を進める素材がいるかどうかを判断するのがバイヤーたちの目的となる。

 一通り展示が終わった後、騎乗供覧となる。11時半を回った頃から、56頭のうち、33頭が2頭併走または単走で、1周1600mのダートコースの向こう正面あたりから走ってくる。タイムは4ハロンと2ハロンを計時し、その都度アナウンスされるが、それほど無理な速さでは追わない。終いの1ハロンもせいぜい12秒台までである。

 ところで日高育成牧場で育成・調教した56頭のうち、すでに6頭が早くも24日のブリーズアップセールに欠場することが決まっている。

 これらの馬たちは、調教を進める段階で「本番に間に合わなかったため」に、やむなく来月の千葉トレーニングセールやひだかトレーニングセールなどに回され上場されることになる。

 この時期、2歳馬はずいぶん成長度において差が出てくる。仕上がりの早そうな馬とそうではない馬、そしてまだ冬毛の抜け切らない馬とすっかり抜け落ちた馬、ほぼ完成された体型になっている馬とまだまだ成長過程にある馬など、ずいぶん落差が目立つ。同じように管理されていても、やはり個体差が著しい。体格も上は500kgを超す雄大な馬から1歳時と比較してもあまり大きくなっていない400kgそこそこの馬までバラエティに富む。

 もっとも、1歳時の購買価格がそもそも違いすぎる。最安値は税込み210万円(ナリタトップロード牡)、最高価格馬は1743万円(ボストンハーバー牡)とかなりの幅なのだ。とはいえ、1歳時の購買価格がそのまま競走成績に反映するわけではないのは、ダイワパッションの例(1歳時810万円→ブリーズアップセール2900万円)でも明らかで、今年はどんな掘り出し物が登場するか楽しみでもある。私も当日は中山に行く予定でいる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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