近年にない好メンバー集結のケンタッキーオークス

2022年04月20日(水) 12:00 15

“エア”の冠でおなじみ吉原夫妻の自家生産馬にも注目

 クラウンプライド(牡3、父リーチザクラウン)が参戦することで、日本でもG1ケンタッキーダービー(d10F)の話題が盛り上がっているが、前日に同じチャーチルダウンズで行われる牝馬のG1ケンタッキーオークス(d9F)が、今年は近年にない好メンバーが集まり、見逃せない一戦となっている。

 ケンタッキーダービー同様、14頭の出走枠に入るには、指定競走で獲得したポイントで上位14位までに食い込む必要があるが、10日にキーンランドで行われたG3ボウモントS(d7F)をもって、ポイント指定競走は全て終了。勢力分布がほぼ確定している。

 ブックメーカー各社の前売りで1番人気の座を争っているのが、エコーズールーとネストの2頭である。

 昨シーズンの北米における2歳牝馬チャンピオンが、エコーズールー(牝3、父ガンランナー)だ。スティーヴ・アスムッセン厩舎から2歳7月にデビュー。サラトガのメイドン(d5.5F)を5.1/2馬身差で制し緒戦勝ちを飾ると、同じくサラトガのG1スピナウェイS(d7F)を4馬身差で制しG1制覇。

 続くベルモントパークのG1フリゼットS(d8F)を7.1/4馬身差で制し3連勝。デルマーのG1BCジュベナイルフィリーズ(d8.5F)も5.1/4馬身差で快勝し、4戦4勝の成績で2歳シーズンを終えた。

 牝馬同士では抜きん出て強いことから、ファンの間ではケンタッキーダービー出走を待望する声が起こり、実際にブックメーカーの前売り上位に顔を出していたのだが、陣営は牝馬路線を選択。今季緒戦となったのが、3月26日にフェアグラウンズで行われたG2フェアグラウンズオークス(d8.5F)だった。

 オッズ1.1倍という圧倒的人気に推されたエコーズールーは、ここも勝って無敗の5連勝を達成したのだが、2着ヒドゥンコネクションとの着差はわずかハナ。逃げて粘ろうとしたところ、G1BCジュヴェナイリフィリーズ4着馬ヒドゥンコネクションにゴール前で詰め寄られ、危うく交わされる寸前だった。

 久々が響いたのかもしれないが、ファンが期待していたエコーズールーの姿ではなく、ケンタッキーオークスの前売りでも、辛うじて1番人気に踏みとどまっている状況だ。

 ここへきてエコーズールーに迫る人気を得ているのが、トッド・プレッチャー厩舎のネスト(牝3、父カーリン)だ。

 2歳12月にアケダクトで行われたG2ドゥモワゼルS(d9F)を制し、重賞初挑戦初制覇を果たすと、3歳緒戦となったタンパベイダウンズのLRサンコーストS(d8F40y)を6馬身差で制して連勝。さらに、4月8日にキーンランドで行われたG1アッシュランドS(d8.5F)を8.1/4馬身差で制し、G1初制覇を果たした。

 ネストは、昨年のG1サンタアニタH(d10F)勝ち馬アイドルの全妹という良血馬で、このあたりの魅力も加味されて、評価が急上昇している。この2頭とそれほど差のないオッズで3番手争いをしているのが、シークレットオースとキャスリーンオーの2頭だ。

 御年86歳の大御所ウェイン・ルーカスが管理するのがシークレットオース(牝3、父アロゲイト)である。

 今季緒戦となったオークローンパークのLRマーサワシントンS(d8.5F)を7.1/4馬身差で、続いて同じくオークローンパークのG3ハニービーS(d8.5F)を7.1/2馬身差で連勝。この地区の3歳牝馬では頭2つ抜けた存在となった同馬は、4月2日にオークローンパークで行われたG1アーカンソーダービー(d9F)で、果敢に牡馬に挑戦。

 3コーナーから捲って出る強引なレースぶりを見せ、さすがにゴール前は脚が上がったが、それでも3着に健闘。ケンタッキーオークスで再び、牝馬同士の戦いに身を投じることになった。

 キャスリーンオー(牝3、父アップスタート)を管理するのも、大ベテランのシャグ・マゲイヒイ調教師(71歳)だ。昨年11月にアケダクトのメイドン(d7F)でデビュー勝ちを飾ると、今季に入ってフロリダ州のガルフストリームパークで3戦。

 キャッシュランS(d8F)を8.1/2馬身差で快勝すると、続くG2ダヴォナデイルS(d8F)を制し重賞初挑戦初制覇。4月2日のG2ガルフストリームパークオークス(d8.5F)も制し、無敗の4連勝でケンタッキーオークスに挑んでくる。

 この他、2月18日にメイダンで行われたG3UAEオークス(d1900m)を制し、デビュー以来の戦績を4戦4勝としての参戦となるシャハマ(牝3、父マニングス)、G2フェアグラウンズオークスがエコーズールーのハナ差2着だったヒドゥンコネクション(牝3、父コネクト)。

 ラッキーフィールドの吉原毎文・世紀恵夫妻による北米における自家生産馬で、4月2日にオークローンパークで行われたG3ファンタジーS(d8.5F)を勝っての参戦となるユウギリ(牝3、父シャックルフォード)。

 4月9日にアケダクトで行われたG3ガゼルS(d9F)の1、2着馬ノスタルジック(牝3、父メダグリアドーロ)とヴェンティヴァレンタイン(牝3、父ファイアリングライン)、4月9日にサンタアニタで行われたG2サンタアニタオークスの勝ち馬デザートドーン(牝3、父キューピット)らが、ケンタッキーオークスに駒を進めてくる予定だ。

 ケンタッキーオークスの模様は、翌7日(日本時間8日朝)にグリーンチャンネルで放送される「ケンタッキーダービー生中継」の中で録画放映される予定となっている。日本の競馬ファンの皆様も、このレースを楽しみにお待ちいただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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