北国の競馬開幕

2006年04月18日(火) 23:48

 4月15日、帯広競馬場にて今年度のばんえい競馬が開幕した。先月27日に昨年度の開催を終了し、わずか中2週間のインターバルで新年度を迎えたことになる。その昔、ばんえい競馬は正月明けの開催で終わり、4月まではシーズンオフになっていた。その間、各厩舎は人馬ともにそれぞれの本拠地へ移動し、新馬の調教を行ったり、交代で休日を取りリフレッシュする余裕が持てた。

 それが近年、馬券売り上げの減少とともに、徐々に開催日数が増え、1月から2月へ、ついに平成17年度は3月末までのほぼ通年開催となったのである。

 そして、例年、旭川で幕を開けていたが、今年は帯広より開幕となったため、人馬は移動せずそのまま帯広に滞在し、2週6日間を消化したのちに、旭川へと舞台を移す。これも、経費削減のための苦肉の策である。この時期、市内の外れの山中に位置する旭川競馬場は、まだどうかするとコースに雪が残っている。融雪剤の散布や除雪費などの経費を抑えるため、天候に左右されず支障なくレースのできる4月末まで開催を延期したのである。

 以降、旭川(24日間)、岩見沢(48日間)、北見(24日間)、そして12月初頭に再び帯広へ戻り、明年3月26日までの66日間、計162日間の開催となる。

 そのばんえい開催を追いかけるように、4月19日(水)、道営ホッカイドウ競馬が門別競馬場よりスタートする。こちらも、開幕の門別開催は2週(4日間)で終了し、5月の大型連休より札幌競馬場へと舞台を移す。それ以降は、6月末まで札幌開催(24日間)を実施したのち、7月より10月中旬まで旭川開催(ナイター42日間)、そして、10月17日から最終日の11月9日までは、再び札幌へと場所を移し12日間の開催となる。売り上げの伸びない門別開催を最小限に抑え、より集客効果の期待できる札幌と旭川に開催を集約したのが今年度の大きな特徴である。

 門別開幕に合わせ、生産地日高の各町はまさしく官民挙げてのバックアップ体制で馬券売り上げに貢献するべく躍起になっている。浦河や静内(現・新ひだか町)より門別競馬場まで無料バスを運行し、入場者増を目指す。また、過日、新冠町議連では有志が集い、ホッカイドウ競馬に組合馬主(新冠軽種馬議連という名称)の申請を行って、認可され次第、正式に馬主として所有馬(すでに馬は用意してあるという)をデビューさせる予定と聞く。構成メンバーは新冠町議7人、町長、助役の計9人。代表の堤俊昭氏は「こうした動きが各町にも波及することを期待している」と話す。

 一方、ホッカイドウ競馬恒例となった「スタリオンシリーズ」は、今年度、新たに13頭が加わり、計75頭の種牡馬が名前を連ねた。スタリオンシリーズとは、賞金の他に種牡馬の翌年の種付け権利が副賞として馬主に贈られる競走であり、皮切りは5月4日の「第6回、春霞賞」(札幌、1着賞金100万円)。このレースにはグランデラの来年度の種付け権利が優勝馬主に贈呈される。民間所有の主要な種牡馬はほとんどが顔を揃え、公示種付け料の総額は1億5000万円にも及ぶとか。JBC協会などの全面協力により実現し今年で7年目を迎える。

 ちなみに、ホッカイドウ競馬で実施される交流重賞4レースには、それぞれ「北海道スプリントカップ」(6月15日、札幌、1着賞金3000万円、副賞タイキシャトル)、「ブリーダーズゴールドカップ」(8月17日、旭川、1着賞金4000万円、副賞アグネスタキオン)、「エーデルワイス賞」(10月12日、旭川、1着賞金2000万円、副賞シンボリクリスエス)、「道新スポーツ杯・北海道2歳優駿」(10月26日、札幌、1着賞金2000万円、副賞キングカメハメハ)という豪華ラインナップである。

 例年、この時期はホッカイドウ競馬開幕の話題で盛り上がる…と言いたいところだが、さて、こうした生産地の動きとそれ以外の北海道全体とでは、実はかなりの温度差があるのではないかという気がしてならない。

 去る4月16日には、日高軽種馬振興対策推進協議会(会長・谷川弘一郎浦河町長)が、札幌市内で街頭PRを実施した。北海道競馬事務所の協力を得て、ティッシュ3000個やチラシなどを市民に配布し「競馬場へ足を運んで下さい」と呼び掛けた。その効果が上がることを期待したいし、生産地だけでホッカイドウ競馬を支えることはもう限界に来ている。人口わずか8万人にしか過ぎない日高の熱気だけでは無理なのである。残る500万人道民の支援を切にお願いしたいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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