アプリ限定 2022年08月15日(月) 18:02
▲障害試験の全容に迫ります(撮影:高橋正和)
平地のレースにデビューするために「ゲート試験」があるように障害のレースには「障害試験」が用意されています。前回は平地から障害へデビューする馬のスケジュールについて話しましたが、今回はその試験の内容について。
生垣や水濠、竹柵といった実際のレースにも使われる障害を使って行われる試験、馬にもそれぞれ性格がある中で、怖がりな性格の馬は試験に落ちてしまい、障害試験をあきらめる場合もあるんだとか。そんな試験を合格へ導くために加矢太騎手が意識していることは? さらには、前回のコラムで取り上げた3頭の試験結果もご報告します!
(取材・構成=不破由妃子)
先週の木曜日、自厩舎(音無厩舎)のスマートキャノンと川村厩舎のフェブキラナが障害試験に挑みました。結果は……2頭とも無事に合格!
障害試験は、単走で行くか併せ馬で行くかを選べるのですが、スマートキャノンとフェブキラナは、どちらも併せ馬で行くことを選択。スマートキャノンは2勝クラスのヒッチコック、フェブキラナは1勝クラスのシグネチャーセルがパートナーでした。
実は、馬にとっても騎乗者にとっても、単走で行くか併せ馬で行くかはとても大事な選択です。それこそ、合否を左右する選択といって間違いありません。
フェブキラナという馬は、障害に対して慎重なタイプで、脚が障害物に当たらないように上に飛びすぎてしまう傾向がありました。最初は単走で障害に慣らしつつ、少しでも向こうへ向こうへ飛べるように調教をしていましたが、やはり前進気勢が少し足りず。そこで試験の際は、本能的に前に行きたい気持ちが強くなる併せ馬を選択しました。
そもそも馬は集団で行動する動物であり、本能的に仲間についていく習性がありますからね。だから、前進気勢の足りない馬には、その習性が生きる併せ馬が効果的なんです。
今回の試験では、パートナーのシグネチャーセルもやや前進気勢に欠けるところがあったので、お互いに高め合い、補い合いながら障害を飛ばしていきました。単走で行っていたら、お互いに難しかったかもしれませんが、併せ馬の効果で2頭とも試験をクリアすることができました。
もう1頭のスマートキャノンは、右に斜飛(空中で右にモタれる)する癖があったので、それを補うために右側に馬を置き、まっすぐに飛ばす練習も兼ねて併せ馬を選択しました。そもそもこのスマートキャノン、一番最初に障害を飛ばしたときは、簡単な角馬場の障害でも脚が上がらず、転びそうになっていたほどの馬なんです。音無先生にも「この馬には障害は無理かもしれませんね」と相談していたくらいなんですが、放牧先で障害練習をしてもらったら、見違えるほどよくなって帰ってきて。
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小牧加矢太
1996年12月24日、兵庫県生まれ。父・小牧太は現役ジョッキー。一度は競馬騎手を志すも、身長の高さから体重制限が難しく、馬術の道へ進む。数々のタイトルを獲得し、2022年にJRAの障害騎手としてデビュー。2024年にはホッコーメヴィウスとのコンビで新潟ジャンプステークスを制し、重賞初制覇。同年には障害リーディングを獲得、JRA賞最優秀障害騎手にも選出され、異例のスピードでトップジョッキーの仲間入りを果たした。
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