2022年10月28日(金) 18:00
天皇賞(秋)へ出走予定のジオグリフ(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
3歳馬が人気を集めることが多い近年の天皇賞(秋)ですが、昨年レース前までに勝ちきれた3歳馬は1996年バブルガムフェローと2002年中山開催でのシンボリクリスエス、2頭しかいませんでした。3歳馬が天皇賞(秋)に出走資格を得た1987年から、延べ35頭が出走して2勝。勝率は6%で単勝回収率にすると39%、“天皇賞(秋)に出走する3歳馬”というカテゴリで考えると過剰人気は明らかで、とても買えるようなものではありませんでした。
ではなぜ、それを承知で昨年1番人気コントレイルと2番人気グランアレグリアを差し置いて、3歳馬エフフォーリアに◎を打てたのか。まずはそれを説明していきましょう。
毎年有馬記念予想時に算出する、3歳馬に関する自前のデータがあるのですが、2021年の3歳世代(エフフォーリア世代)は、そこで図抜けた成績を出していたからです。有馬記念前ではなく天皇賞(秋)前の暫定的な算出ではあったのですが、レベルが高いか低いかで言えば、2021年の3歳世代は“恐ろしく高い”という判断を下すことになったということです。
……表現をぼかさず全部書いてしまいましょうか。3歳牡馬(+セン馬)の同年古馬混合芝重賞複勝率が24%を超えているような年の3歳馬はレベルの高い世代と見て良く、有馬記念を勝つ可能性も高いという話です。2021年はこれが1986年以降歴代最高の54%であり、今年の3歳世代も負けず劣らずの50%をキープ。これが昨年3歳馬エフフォーリアに◎を打てた理由であり、今年も3歳馬に注目すべき理由にもなってきます。
■3歳牡馬(+セン馬)の同年古馬混合芝重賞複勝率と、3歳馬有馬記念勝ち馬一覧
1986年 40% ダイナガリバー 1987年 21% 1988年 24% オグリキャップ 1989年 17% 1990年 16% 1991年 21% 1992年 14% 1993年 24% 1994年 25% ナリタブライアン 1995年 33% マヤノトップガン 1996年 22% 1997年 35% シルクジャスティス 1998年 31% グラスワンダー 1999年 17% 2000年 19% 2001年 27% マンハッタンカフェ 2002年 25% シンボリクリスエス 2003年 21% 2004年 23% 2005年 16% 2006年 25% 2007年 23% 2008年 22% 2009年 15% 2010年 47% ヴィクトワールピサ 2011年 29% オルフェーヴル 2012年 24% ゴールドシップ 2013年 17% 2014年 15% 2015年 24% 2016年 30% サトノダイヤモンド 2017年 27% 2018年 27% ブラストワンピース 2019年 20% 2020年 21% 2021年 54% エフフォーリア 2022年 50% ← いまここ
※3歳牡馬(+セン馬)の同年古馬混合芝重賞勝率は、いずれの年も有馬記念前週までの成績 ※2022年は10月26日現在の数値 ※3歳馬が勝った有馬記念のみ、馬名を表記
単なる偶然だと思うかもしれませんが、40年近くに渡り有馬記念で使えているデータ。実際に2021年の有馬記念も3歳馬のエフフォーリアが勝ちましたし、それほど無意味なものとは思えません。何せ23%以下の時に有馬記念を勝てた3歳馬は、データの残っている1986年以降1頭もいないのですから。
■3歳牡馬(+セン馬)の同年古馬混合芝重賞複勝率別、3歳馬の有馬記念成績 24%以上 47戦【14- 1-2-30】勝率30% 単勝回収182% 23%以下 78戦【 0-10-7-61】勝率 0% 単勝回収 0% 合計数値125戦【14-11-9-91】勝率11% 単勝回収 68%
今年の3歳馬、古馬混合芝重賞での勝ちは先週富士Sでのセリフォス1頭なのですが、ウインマーベル、フェーングロッテン、ダノンスコーピオンなどが古馬重賞で3着以内に好走。さらにトウシンマカオ、ピースオブエイトといった辺りまでもが4着、5着の好走を見せており、5着以内率を見ると驚異の90%超。これは驚異的と評した2021年にも見劣りはしないものと言えるでしょう。今年天皇賞(秋)に出走予定の3歳馬はイクイノックス、ジオグリフとダノンベルーガの3頭。
ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで天皇賞(秋)を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール 岡村信将(おかむらのぶゆき) 山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。
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